個人情報「利活用」前のめりに危惧(出版研究室から[55])

デジタル庁の設置に伴い、個人情報保護法が大幅に「改正」された。改正法は「デジタル社会形成整備法第50条による改正」が今年4月1日に施行され、「同第51条による改正」が23年5月19日までに施行される。このようなスケジュールの下、個人情報保護委員会が1月28日から2月28日にかけて、個人情報保護法の「ガイドライン」等の一部改正に伴う意見募集を行った。今回の改正で民間と行政が一本化されたことから、個人情報保護法の運用にどのような変化が見られるのか、ガイドラインによって具体的に示されることになるので、結果の開示に注目したい。

たとえば現状では、不動産登記法第119条により、所定の手続きをすれば登記簿に記載されている個人情報は誰でも入手できる。なぜなら同法第155条に「行政機関個人情報保護法」の適用除外が明示されているからだ。そして、この個人情報をもとに個人にDMを送るなど、民間の「個人情報取扱い事業者」が個人情報を商用利用することが可能となっている。個人情報保護法では、法手続きを経て行政機関から個人情報を入手することについては特に規定はされていない。行政機関から民間に渡った個人情報に対して、行政は関知していないことになる。

では、この度の法改正で個人情報保護法が一本化されたことにより、個人情報の利用を目的とする入手や取り扱いなどに、どのような変化が生じるのだろうか。この法改正が個人情報の「利活用」に力点を置いていることが、とても気になるところである。

デジタル化の推進に伴い、「情報」の重要性が叫ばれるとともに、その「利活用」が優先課題となっている。しかし、個人情報(=プライバシー)の保護が疎かになってはならない。出版労連として、プライバシー保護の立場から、具体的な提言なども視野に入れて、取り組んでいく必要があると考える。

(出版研究室主任研究員・前田能成/『出版労連』2022411597号より)