来る年 忖度なしでモノ申す(出版研究室から[63])

 2022年は、生活面でいえば物価・エネルギー価格の高騰に尽きるだろうか。振り返ると、コロナ禍丸3年、ウクライナ戦争、それら起因とする円安等々。高くなった電気・ガス料金、食料品を含む生活必需品の止まらない値上げラッシュであった。この情勢と出版業界はどう関係したのだろう。今後掘り下げてみたい。

 出版界は、電子や版権ビジネスが好調な出版社があるいっぽうで、厳しい経営を余儀なくされている会社が少なくない。年末一時金の交渉結果からひとつの現実が見えてくる。大手中心の伸長を横目に、中小出版社は「ディフェンスとしてのデジタル化」に力を割けず、さらに紙の値上がり、印刷代の引き上げも加わり経費増に頭を痛めている。

ここ数年、常に問題とされてきた書店数の減少が止まらない。業界の経営者とりわけ書店・取次の危機感は半端ない。『新文化』に「戦後最大の危機」という表現があった。地方の一例だが、佐賀新聞の記事によると県内の書店数が1990年代には約140店舗あったのが、今や40店舗を割ったとのこと。危機はのりこえなければならない。原因を抉り出すことで、打開の道は開けるはずだ。問題は、誰が? どうやって? である。

「それを今言うか」と言いたくなる記事を目にした。ある新聞に業界の責任ある人の言葉として載っていた「出版業界全体で手を取り合って対策を考える段階に来ている」がそれである。2023年は文化と営業を守るとりくみとして始めなければならない。

出版研究室の活動で最も力を入れているのがHPである。現在「出版文化をめぐる」に、出版サービスWille(ヴィレ)代表の豊田政志氏から読み応えある「アジアの本旅」を寄稿していただいた(現在連載中)。

来年は小なりとはいえ、出版労連の一機関の出版研究室、業界に対しても忖度なしでモノ申していこうと思う。

(出版研究室副室長・平川修一/『出版労連』20221211605号より)