「法改正」によって危ぶまれる「表現の自由」=「立法事実」の重要性(下) 「朝日新聞5月8日付/社説‐侮辱罪厳罰化 慎重な審議を求める」、「東京新聞5月11日付/『侮辱罪』厳罰化へ刑法改正案審議~言論の自由 どう担保」、「信濃毎日新聞5月12日付/社説‐侮辱罪の厳罰化 自由な言論 圧迫する恐れ」ほか

国会では、政府案に対して立憲民主党が対案を提出している。この対案がどのようなものか、立憲民主党のホームページの「インターネット誹謗中傷対策法案」*1に掲載されている「法案およびその解説文書」*2を見ながら、検証してみることにする。文書からの引用部分は『』で示した。

この対案のコンセプトは『インターネット・SNS上等の誹謗中傷への対策を行う』ことである。対案を提出したのは、『インターネット上の誹謗中傷が社会的な問題となっている現状』が存在する一方で、『政府提出法案のインターネット・SNS上等の誹謗中傷への対策が的確なものとは言えない』ことによる。法案の中で注目したいのが『加害目的誹謗等罪の創設』である。これについては『人の内面における人格に対する加害の目的で人を誹謗、中傷した者は拘留又は科料に処する。公共性、公益目的、真実性があったと認められる場合は罰しない、などの特例を定める』としている。

さらに、犯罪被害者保護法を改正して『損害賠償命令制度の対象事件に名誉棄損罪などを追加する』、プロバイダ責任制限法を改正して『特定電気通信の定義や権利侵害の態様などを見直すとともに、ドメイン・ネーム管理者にも開示請求できるようにする』など、インターネットやSNS上での誹謗中傷に対する、被害者の保護や加害者の特定による抑止などにも言及している。

*1 該当ページのURL: https://cdp-japan.jp/news/20220420_3525

*2 文書は4点あるが、その中の「インターネット誹謗中傷対策法案 ポンチ絵」を使用。

「侮辱罪」の厳罰化がインターネットやSNS上の誹謗中傷による被害を抑止する、という目的にかなうのならば、それは社会の共通理解を得られるだろう。しかし、「表現の自由」を侵害するという批判が出てくるというのは、提出された法案が目的に対して不十分だからである。

なぜ不十分なのか。それは「立法事実」に対する議論が深まっていないからだと推察する。新たに法律を作ったり、現行の法律を改正したりするのは、その必要があるからである。それが「立法事実」である。

一方で、必要があるからと言ってむやみに法律を作ったり改正したりすると、今まで問題がなかった部分に新たな問題が発生することが考えられる。そうなったら今度は、「新しい法律や改正した法律に対しての改正の必要性=新たな立法事実」が発生することになる。

そのようなことが起こらないように、法律を作ったり改正したりする場合は、「立法事実」を様々な角度から検証し、国会では議論を尽くすことが重要と考える。

今国会では「経済安全保障推進法」(経済安保法)が成立した。この法律についても、「特定秘密保護法」と共通した問題が指摘されている。果たして、経済安保法の「立法事実」に対する国会での審議は尽くされたのだろうか。

私たちは改めて、国会での審議を「立法事実」に照らして検証していく必要があると考える。

 

この「侮辱罪」に関わる法改正については、5月9日に、「共謀罪NO!実行委員会」と「「秘密保護法」廃止へ!実行委員会」が連名で「表現の自由を侵害する 侮辱罪の法定刑引き上げに反対します」と題した声明を発表している。この両実行委員会には出版労連やMICも関わっているので、そちらの声明にも目を通していただきたい。

※この「声明」は下記のサイトでご覧いただけます。

共謀罪NO!実行委員会 https://www.kyobozaino.com/

「秘密保護法」廃止へ!実行委員会 https://www.himituho.com/