出版関連産業の現況

出版関連産業の現況

 

2017年の出版産業は、2016年から続いている「文春砲」や他の週刊誌が繰り出すニュースの話題はあったものの、超ベストセラー本がなかったことなどから、出版がもたらす社会への影響はそれほど強くはありませんでした。

取次を経由した書籍・雑誌の販売額は大きく下落し1兆4,000億円を割り、1兆3,000億円台となってしまいました。これはピーク時(1996年、2兆6,000億円)の約半分の数字です。この数年の下降率で推移すれば1兆円産業となる可能性もあるのではないかと危惧します。「今の出版市場は『雑誌不況』」といわれるように、雑誌の激しい落ち込みが目立ちますが、書籍の販売額も毎年下落しています。

待ったなしの業界改革が必要なことは、すべての出版関係者が感じ・考えていることだといえます。焦眉の課題は流通問題と正味問題ですが、この2つも複雑に関わりあっています。ある業界関係者が、「たしかに正味の問題はなんとかしなければならない課題だ。しかし急激な変化は出版社にとっては既存のかたちを壊してしまう可能性がある。真剣に、しかし急いで知恵を出し合って解決しなければいけない」と語っています。まったく同感です。

戦後に築かれた出版物の三位一体(出版社、取次会社、書店)の流通システムが機能不全に陥っています。前述の関係者の発言でもわかるように、三者それぞれが現在のシステムのほころびによる影響を受けています。一刻も早い「改善」が求められていることは確かです。

憲法21条には「言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」とあります。これは私たち出版労連の、出版人の生命線です。この生命線が、いま、たいへんな勢いで侵食されつつあります。2017年には、いわゆる共謀罪法も成立してしまいました。出版労連は、出版産業唯一の産業別労働組合としての運動と出版活動を通して広く社会に憲法21条の大切さを訴え続けています。(⇒関連項目「表現の自由」)