「国葬」でよいのか? メディアは何を!(出版研究室から[61])

安倍元首相の射殺を各メディアは大々的に扱ったが、いち早く旧統一教会との関連を報じたのは週刊誌とネットであった。

NHKは犯人が「旧統一教会が関係あると思い込んで~」と報じ、国葬が浮上すると真っ先に戦後レジームからの脱却、アベノミクスなどを功績と紹介した。教育基本法改正、森友や加計、桜を見る会の報道は歯切れが悪い。

 信濃毎日新聞は9月10日に①安倍元首相の国葬について、②自民党と旧統一教会の関係について、県民緊急電話調査を行った。①は反対68%、わからない17 %、賛成16%。反対の42%が業績、功績がない、21%が多額の費用である。賛成の63%が国葬にふさわしい業績、14%が在任期間と回答。②は旧統一教会との関係を、極めて問題がある65%、ある程度問題があると合わせて89%になる。支持政党別では、自民党支持者でも76%、無党派層の92%が問題ありと回答した。

見出しは『国葬 県民の厳しい視線』『首相説明納得できず』とあり、県民の多数が業績を認めておらず、国葬よりも民生に税金を回せという切実な声を反映している。長野県知事が国葬に不参加を表明した記事も出た。

桐生悠々が主幹を務めた信毎記事を紹介したが、安倍政権時代を振り返れば、メディアが忖度、委縮を強いられた時代と言える。事例に枚挙の暇はない。

いま、国葬問題でメディアの姿勢が問われている。賛否は二分でなく「反対」である。

メディアは政権の横暴に対峙し、憲法や歴史的な根拠を明確にして国民的な議論を喚起する役割がある。政権へのさらなる忖度、委縮は無用である。

政権の無為無策を嘆いている時間はない。窮乏に喘ぐ国民に何を報道すべきか。悠々なら『安倍国葬を嗤う』と著したかと想像する。

いまこそメディアが、出版が! 此処にメディアの復権がかかっている。

(9月17日記/出版研究室・橘田源二/『出版労連』2022年11月1日‐1603号より)