マイナンバーカードと個人情報保護法委員会への期待(出版研究室から[62])

マイナンバーカードの普及率が、2022年10月18日の時点で50%を超えたという報道がされた。

この間、政府はキャンペーンを繰り返してきたが、この中で「マイナンバーカード交付申請書」なるものが、マイナンバーカードを所有していない人に送られている。送られている封書の中には、当人の住所・氏名・生年月日・性別が印刷された文書が入っているのだが、併せてマイナンバーカードの保有を申請していないという個人の内心に関わる情報が、利用されていることになる。これは、個人情報保護法に抵触しないのだろうか。

個人情報保護委員会に問い合わせてもマイナンバーに関連することは専用窓口に聞いてくれと言って答えないのは経験済みである。そこでマイナンバー総合フリーダイヤルに電話をして、その疑問を投げかけてみたところ、電話口に出てきた男性が自ら、個人情報保護委員会に問い合わせてくれた。その結果、個人情報保護委員会の見解は、「法律を見てみたが、法律に抵触してはいないという書き方も、やってはいけないという書き方もされていない」ということだった。微妙な回答である。どう解釈したらよいのだろう。結論はクロでもシロでもなくグレーだということなのか。

「デジタル庁がマイナンバー制度における安心・安全の確保」という文書で、制度に対する国民の懸念を並べ、「制度面の保護措置」として、個人情報保護委員会の「監視・監督」を法律に基づいて掲げている。マイナンバーカードの保有への不安の一つに、国家による個人情報の一元管理があげられているが、その監視役となる組織として、個人情報保護委員会が、名実ともに個人情報を保護する組織となることを期待したい。

(出版研究室主任研究員・前田能成)/『出版労連』20221111604号より)