浅井澄子『書籍市場の経済分析』の紹介 その1  新 村 恭

著者は、明治大学政治経済学部教授。本は全き学術書で、2019年8月10日、日本評論社刊、A5判上製316頁、8000円+税である。出版界では、ほとんど知られてないのではと思われる。最初に目次を掲げておく。章の下の節は抄録である。

 

 

序章

本書の目的/検討の視点/各章の要8

第1章 書籍市場の概要

書籍の特徴/需要と供給の集中度/電子書籍

第2章 書籍の流通と価格拘束

日本の書籍流通/日本と諸外国の価格拘束/価格拘束の意義/英国の状況

第3章 市場規模と新刊書の発行

書籍市場の構造変化/新刊書の発行

第4章 公共図書館の貸出の書籍販売への影響

両者の関連の議論/公共図書館の活動/データと推定結果

第5章 書籍の需要の決定要因

既存研究の概要/単行本、文庫、新書の需要関数と価格関数の推定

補論1 フィクションの電子化/補論2 学術情報の電子化とその価格

第6章 書籍価格の日米比較

米国における書籍価格の割引状況/洋書と翻訳書の価格比較

第7章 専門書の発行と大学図書館

専門書市場の概要/大学図書館/経済学の専門書/学術書の需要と価格の決定要因

第8章 書籍の購入パターン

フィクション/映画化と文学賞作品の効果/フィクション以外の単行本/新書

結章

流通システム/価格設定方式/書籍発行とタイムラグ/外部プレイヤーとの関係

 

最初に「本書の目的」から示しておく。

テーマについては、「エビデンスに基づく議論の蓄積は少ない」「出版産業という閉じた世界での議論が多く、アカデミックな領域、特に経済学との対話が少ない」。「本書では、業界の枠を超えた議論を行うため、経済学をバックグランドとした書籍市場の実証分析を行っていきたい」(下線は引用者)。

次回から内容の紹介を行うが、分析は綿密なデータの採用による数式を含んだものなので、ほぼ結論的な部分のみになることをおことわりしておく。

(しんむら やすし、出版労連京都地協)