危険なトレードオフ

T:ねえねえ、Mさん。この記事(4月28日付の日経新聞電子版)「10万円「給付」に時間 マイナンバー普及遅れも影響」、どう読んだ?

M:10万円の給付対象者が、住民基本台帳に記載されている者(詳細は文末参照)となっているから、マイナンバーカードを利用すると手続きがスムーズになるって言いたいんだろうけど、まあ、問題あるよね。

T:例えば?

M:マイナンバーカードは個人情報の塊でしょ。つまり、個人情報の流出という危険との兼ね合いだね。個人情報が盗まれて悪用されるという事件も現実にあるし、個人情報が特定の企業に集中することも危険と言われてるよね。もっと怖いのは、国家による監視社会化に繋がる危険性だね。特に監視社会が進むと、自由な出版活動の保障が危なくなるね。

T:確かに…。でも、今回は給付を早く受けたい人もいるよね?

M:そう、企業活動の自粛や休業、倒産なんかで、解雇されたりアルバイトができなくなったりして、困窮している人が大勢出てきてるよね。お金が無くて大学を退学しなければならないという若者も出てるらしいし。だから1日でも早く、給付される10万円がその人たちの手元に届いて欲しいと願うのは十分に理解できる。でも新型コロナウイルスが発生したことで、政府にマイナンバーカード普及推進への手がかりを与えそうな状況になりそうなのは問題だと思うね。マイナンバーカードを持つことは、持たないことよりも、そんな危険に遭遇する機会が多くなるということなんじゃないかな。個人情報を晒して目の前の利益を取るか、個人情報流出の危険を回避するように努力して自分の人生を護るか、“危険なトレードオフ”に直面していると、言えるかもね。

 

※特別定額給付金(仮称)10万円の給付について

「4月27日に住民基本台帳に記載されている者」が給付対象者。住民基本台帳法では、住民票には個人番号(マイナンバー)が記載されることになっているので、マイナンバーカードがあれば住所に紐づけしやすいから、給付金を早く受け取ることができるというのが政府の弁。しかし、マイナンバーカードで給付金申請をするための手続きで、役所の窓口に殺到した区民や市民によって、「三蜜」状態が作り出され、窓口が大混乱したうえに、かえって給付が遅くなるといった、皮肉な状況が作られてしまった。