昨年10月のこの欄で「GDPRと情報銀行」に触れた。諸外国との通商が個人情報の管理に深く関係する事例として取り上げたのだが、今回改めて、TPP11とEUとのEPAを例に、憲法 21 条が保障する「言論・出版・表現の自由」について考えてみたい。
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2018年12月30日にTPP11が発効した。これに伴って、非親告罪化が盛り込まれた「改正著作権法」が同日に施行された。2017年に成立・施行された「共謀罪法」(改正組織犯罪処罰法)は、共謀罪の対象犯罪277の一つに著作権法違反を規定している。
米国も参加してTPP交渉が進められていた時期に出版労連は、著作権侵害に対する非親告罪化を懸念し、TPPの問題点として指摘していた。また、共謀罪法が国会で審議されていた頃は、共謀罪そのものへの反対と併せて、著作権法違反が共謀罪の対象犯罪とされていることの問題点を指摘していた。
非親告罪化が盛り込まれた改正著作権法が施行されてしまった今、その問題点を改めて検証することが、憲法21条が保障する「言論・出版・表現の自由」を活用することの重要性の再認識に繋がると思う。そこで、改正著作権法がどのように変わったのか検証したい。
なお、この改正法の施行とは別に、昨年5月に公布された改正著作権法(法律第30号)が今年1月1日に施行された。また、昨年の学校教育法の改正に伴って一部改正された著作権法が4月1日に施行される。出版産業に深い関係のある著作権法は頻繁に改正されているので、その点にも注意したい。
(出版研究室主任研究員・前田能成)〔『出版労連』1559号/2019年2月1日より〕