出版研究室は開設3年目を迎え、スタッフ一同決意を新たにした。
しかし、「新年おめでとう」と浮かれてはいられない。出版売り上げの下落は予想可能だが回復は見込めない。
昨年末、日販とトーハンが物流を協業化すると発表した。両社が昨春に公正取引委員会に相談し、半年後に公取がゴーサインを出した。
再販制と版元・流通・書店の三位一体構造の矛盾が極まり、出版文化の危機として看過できない段階に入ったこと、その背景にはアマゾンなどの動きあると思われる。
昨年末の臨時国会で入管法が成立した。出版流通には多数の外国人が劣悪な条件で働いている。一見出版と無縁のような入管法も産業に関わっている。
出版労連は憲法問題対策本部を設置した。改憲に伴う国民投票法とメディアの関係、言論・出版・表現の自由の問題は喫緊の研究課題である。
また消費税増税で出物は大打撃を受ける。日販、トーハンの協業化を契機に、出版産業全体で産業新生の道を議論する必要がある。
一方でビッグデータの集積、AIへの応用、ロボット化が言われている。生活スタイルが変わるなかで、出版産業はどうしていくのか?
NHKスペシャル「AIに聞いてみた どうすんのよ!? ニッポン『健康寿命』」(2018年10月)でAIの回答はずばり「本や雑誌を読む人が長寿」。
41万人分600項目の質問と回答分析の結果である。番組によると、山梨県の10万人あたりの図書館数が6.6、全国平均は2.6。健康寿命で男性が1位、女性は3位。読書は健康長寿の妙薬。
人生100年の時代。AIは読書の効用を説いた。出版の活路はある。人が本をつくり、本は人をつくる。
(出版研究室室長・橘田源二)〔『出版労連』1558号/2019年1月1日より〕