アジアの本旅① 台湾・誠品書店

2004年夏、ボクは台湾へ初めて訪れた。

関西在住韓国人の友人が、転勤で台湾へ行ったことがきっかけだった。

2002年に韓国縦断旅行を行ってからは、すっかり韓国一色の生活を送っていた。

東シナ海を挟んだ日本と馴染みの深い韓国と台湾。

経済・文化の面でも水準は近い。

どうしても両国を比較の目で見てしまう。

一回目なので、台北市のみ隈なく回った。

中正紀念堂、国立故宮博物院、できたばかりのTaipei101、台湾食文化の代名詞ともいえる夜市など、とにかく観光地に足を運んだ。

すると、目抜き通りを歩くたびに見かけるのが『誠品書店』というおしゃれなロゴ。

百貨店、ショッピングモール、地下街のあちこちにある!

書店閉店ラッシュの日本とは真逆の状況だった。

仁愛敦南圓環という広いロータリーへ歩くと、敦南金融大楼というビルの1Fに大型店の敦南店がある。内外装共にジュンク堂のようだ。

書籍売場は地下1階から地上2階までで、1フロアあたりおよそ150坪はあるだろう。

世界初24時間営業の大型書店、というのがウリである。

エントランスにあるラックに誠品書店が発行するフリーマガジンまで置いてある。

その他、誠品系列の画廊、美術館、イベントホールなどのフライヤーもある。

日本では存在しない大手書店発行の雑誌。

「なんで日本の大手書店はこういう事を手掛けないのだろう」と思うばかり。

もう誠品書店へのリスペクト大だ!

誠品書店以外のチェーンでは金石堂書店があった。1店舗あたり20坪前後の店が主流で、ビジネス書に強いらしく、地下街などに多く出店していた。今では廃れているようだ。

これって日本以上の出版大国?

現地へ行って初めて知った台湾の書店文化。

それからはどんどん深みにハマっていった。

2006年には、台北市役所や阪急百貨店など大型商業施設のある信義地区に「誠品書店信義旗艦店」ができた。売場面積3,000坪の地上6階建で、2階から5階まで丸ごと書店というウルトラメガなストアだ。

地下1階はフードコート、1階は誠品ブランドの文具・雑貨、6階はレストランで、2階から5階までが書籍売場だが、5階は児童書と日本語書籍のコーナー。

1フロアあたりおよそ800坪の半分が、日本の出版物と、繁体字に翻訳された日本の書籍を置いている。さすが親日国家!

とにかく圧倒的な品揃えに魅せられっぱなしだった。

2007年、高雄市にある台湾最大のショッピングモール「統一夢時代」(台湾流通大手・統一超商と阪急百貨店の合弁事業)で見た誠品も大きかった(現在は閉業)。

誠品書店巡りは台湾旅のルーティンとなっていた。

現在は台湾全土で41店舗、香港で3店舗、大陸(中国)では2店舗と、アジア最高の書店の称号を得ている。

そして日本では2019年9月に東京・日本橋のコレド室町テラスに「誠品生活日本橋」名義で出店している。まだ現地へ訪れていないが、日本最大の台湾文化発信拠点となっているにちがいない。

日本や他の国の書店との違いは何だろうか?

無機質な昔の書店とは違い、円形の平台や、ミュージアムや劇場のような造りの内装だ。日本のジュンク堂は書棚、床がほとんど木製で大型図書館のような感じだが、誠品は書籍とアート、生活用品が文化的空間として上手く融合されている。読書人が好むジュンク堂の空間に対し、誠品は上品なミュージアムのようで庶民的な空間といえよう。書のテーマパークと言っても過言ではない。

読書をメインコンセプトに画廊、ホール、雑貨、アート風なホテル(松菸店併設)、フードサービスなど事業は多岐にわたっている。

現状は文化クリエイティブをベースとした店舗「誠品生活」がメインになりつつある。蔦屋家電やLOFT、東急ハンズに書籍売場をミックスしたようなスタイルだ。

あくまでも書店メインを損なわず、誠品のイメージそのままというのが、読書人に支持され続ける要因かもしれない。

誠品がMade In TAIWAN 文化ブランドの象徴であるのは間違いないだろう。

 

<出版サービスWille(ヴィレ)代表・豊田 政志>

1967年生まれ。兵庫県姫路市出身、伊丹市在住。
大学卒業後の1991年、関西系取次会社に約20年間在籍。取次会社時代は書店の開業企画部門、近畿圏担当の営業部、商品管理業務を経験。
退職後、充電期間を経て自費出版編集・出版サービスWille(ヴィレ)を開業する。現在、高齢者を対象に実績を積み重ねている。最近では活動範囲を自分史作成業へと広げる。
文芸同人誌即売会・アジアの出版事情などにも熱い視線を向け、関西系出版流通ウォッチャーとしても活動開始。インディーズ出版Wille名義の著書「取次とはなにか〜本のウラ側語ります」「本でつながる台湾〜台湾独立書店出版レポート」がある。