『本の周辺』 布川角左衛門著
日本エディタースクール出版部 1979年1月 発行
布川角左衛門(1901~1996)は岩波書店の編集部長を経て筑摩書房、栗田出版、書協、出版倫理協議会などで重責を担い、出版関連業界の発展に多大な功績を残している。
本書は筑摩書房の『ちくま』の創刊号(1969年)から1977年1月まで掲載されたものがまとめられ、目次からも著者が出版界に注いだ思いが読み取れる。360ページの中に版権と著作権の関係、印税の話、戦時下の検閲、出版とGHQ、ポルノ表現と1964年制定の東京都の「青少年の健全な育成に関する条例」など、周辺の項目は多岐にわたっている。
執筆から半世紀が過ぎている。当然、この間に出版界の事情は様変わりした。しかし、本書にあるテーマと論点は古びていない。むしろ出版の本質は変わらないことがわかる。デジタルの記述はない。もちろんAmazonの項もないが、それはいま出版に携わる私たちの課題である。
著者が没した1996年を境に出版物の売上げは減少し、紙媒体からデジタル化が進んでいる。大手取次が協業化する時代でもある。出版関連業界が危機に直面して、大転換を迫られている状況下、本とその周辺を大局的に捉えることができる貴重な1冊である。
*本書は現在「品切れ」となっている。
(本の仙人)