言葉と文字を考える(中)(出版研究室から[6])

1月22日から通常国会が開会した。現在、予算委員会で審議が行われているが、政府・与党が重要法案と位置付け、今国会での提出及び成立を目指している「働き方改革関連法案」をめぐり、野党が政府を厳しく追及している。この追及のきっかけは、法案作成のために使用された厚生労働省の調査データが不適切なものであったことによる。そして、厚労相が「なくなった」と答弁した調査原票が、その後の調査で厚労省内の地下倉庫でみつかったことから、野党が法案の提出そのものの取りやめを求めるという事態になっている。

国会におけるこの一連の騒動を「行政文書」の作成や保管という視点から見直すと、森友学園問題や加計学園問題と、問題の本質が酷似していることがよく分かる。それは、文書がルールに則って作成されず、また保管されていないことの重要性が、公文書管理法との関係できちんと押さえられていない点である。

行政文書は「公文書管理法」に則って作成され保管されなければならない。この法律では「国などの諸活動等の記録である公文書等は、健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源であり、主権者である国民が主体的に利用し得るものである」という趣旨の目的がうたわれており、さらに第4条には「行政機関の職員は、当該行政機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう文書を作成しなければならない」という法の趣旨が書かれている。このことから「言葉と文字」について考えてみたい。

(次号に続く/出版研究室主任研究員・前田能成)〔『出版労連』1548号/201831日より〕