言葉と文字を考える(下)(出版研究室から[7])

財務省が森友学園との交渉経過を記した決裁文書の改ざん問題が、政権を揺るがす問題に発展している。

前回のこの欄で公文書管理法に触れたが、公文書管理法は行政の行為を記録として残すことを目的としている。つまり、正確な記録を残すことが前提となっており、記録に虚偽があることは想定していない。また、法律に違反した際の罰則も規定されていない。だからこそ、行政に携わるものは法の趣旨と公文書の意義、その重要性を理解して、実務に臨まなければならない。行政文書は私たち主権者のものであり、行政のかってな判断で改ざんされたり、事実が歪められて記述されたりするなど、けっして許されるものではない。

財務省と森友学園との交渉経過を示すものとして、国会での籠池氏の証言や交渉時の音声記録、そして改ざんされたと見られる財務省の決裁文書など、数々の証言や文書が提示されている。国会での証言や答弁は、事実がありのままに述べられる保証はないかもしれないが、基本的に公開され議事録として記録される。交渉過程は、公開の場ではなくてもその場にいた者が正確に記録することに努めれば、十分に跡付けできる資料となる。このように行政の過程や結果は、記録として残し、跡付けできるようにすることから始まる。

私たちの日常生活の中では、跡付けまで考える必要はないだろうが、発する言葉や文字は自身の足跡になる。「表現」の手段は様々あるが、いずれの表現も自由が保障され、自身の足跡を残せる世の中でありたい。そのためにも、出版に携わる者として、「言葉と文字」のありようを考え続けていきたい。(了/出版研究室主任研究員・前田能成)〔『出版労連』1549号/201841日より〕