2017年の気になる出版界の現実(出版研究室から[3])

「本が売れない」に始まった出版不況は、雑誌の超不振で決定的なものになった。加速度を増す業界の崩れ方は、出版関連業界の連携のほころびや、バランスが崩れていることに端的に現れている。

2017年も出版業界ではさまざまなことがあった。間もなく出版界10大ニュースが発表になる季節となったが、話題をかっさらった大ニュースではないけれども、〝地味〟で気になる問題を拾ってみたい。

まず、「書店ゼロの街2割超」(朝日新聞8月4日)というもの。地域に1店舗もない自治体が、前回調査時(13年)より増えて全国の自治体の2割を超え、420もの市町村・行政区にのぼるという。中小書店の減少を如実に示している数字といえる。背景や原因の究明はいろいろなところでなされているが、有効な打開策は残念ながら示されていない。

次に、2020年東京五輪を目途にコンビニエンス・ストアからアダルト雑誌を撤去するという動きが強まっているということ。今春、堺市が一部のコンビニエンス・ストアと「有害図書類を青少年に見せない環境づくりに関する協定」を結んだ。これに対して、雑誌協会は「図書選択の自由を阻害する」として声明の発表や、堺市に対する申し入れを行った。強まるであろう表現規制問題として出版労連でも深く考える必要があると考えている。

最後に、大手取次の下請け会社で働いている労働者の実態や賃金・労働条件から出版業界の現実が見えてくる問題だ。想像を絶する〝格差〟の根拠分析を急ごうと思う。

(出版研究室事務局長・平川修一)〔『出版労連』1545号/2017121日より〕