学び返したい憲法21条の精神(出版研究室から[2])

出版労連は言論・出版・表現の自由を守り、出版物をとおして平和や文化を発展させる運動をしている。先日の出研集会では【出版産業「崩壊」の危機を超えて~】をテーマに掲げた。出版研究室は厳しさが増す産業のあり方を研究しているが、表現活動の視点からも選挙結果と今後の動向を見ていく必要があると考えている。

改憲が焦点の選挙結果で自公が3分の2議席を得た。同調する野党を合わせて改憲勢力は8割以上になり、改憲の準備は確実に進む。選挙の結果で私たちの生活やその糧となる仕事はどうなるのか?  あらためて考える必要がある。

安倍政権は教育基本法、特定秘密保護法、共謀罪などを強行採決してきた。メディアへ直接、間接に圧力をかけ規制強化をしている。その実態は当研究室が関わる「共謀罪を考えるメディア関係者の会」や「憲法と表現の自由を考える出版人の会」などで報告されているが、今後、その流れにどう立ち向かうのかが問われてくる。

共謀罪について、国連特別報告者のカナタチ氏が「表現の自由を不当に制約する恐れがある」と指摘し続けている。元CIA職員のスノーデン氏はネットや携帯電話の監視システムと運用を問題視している。共通して個人の思想や表現活動の自由が制約されると危惧している。

与党はすでに改憲案の骨子を出している。戦前、メディアは大政翼賛の一翼を担った。その反省から70年余を経たいま、私たちは憲法21条の深い精神を学び返す必要がある。

(出版研究室長・橘田源二)[『出版労連』1544号/2017111日より]