【つぶやき】猛威を振るっている新型コロナウイルス。空間的にも時間的にも社会全体に大きな影響を与え続けている。今は、冷静に、そしてすべての英知を結集して2020年の大きな問題にあたっていかなければならない。しかし、現実社会は同時に動き続けてもいる。出版業界も例外ではない。こんな時に、とお思いの方もおられるかも知れないが、出版研究室は出版関連産業の動向に目を凝らし続ける。
昨2019年12月24日付の読売新聞に“「紙で読書」能力高め”という見出しを見つけた。これは何だろう? 読んでみたら、国立青少年教育振興機構が前日に発表した「子供の頃の読書活動の効果に関する調査研究報告書」を取り上げた記事だった。
そこで、国立青少年教育振興機構のサイトにアクセスし、報告書を読んでみたところ、これが興味深いので、一部をご紹介したいと思う。
まず調査の目的についてだが、【本研究の概要】で次のように述べている。*1
子供の頃の読み聞かせや読書活動の実態、読書活動が大人になった現在の「自己理解力」(自己探求・自尊感情・充実感など)、「批判的思考力」(論理的・内省的・問題解決力など)、「主体的行動力」(意欲・将来展望など)のいわゆる意識・非認知能力に与える影響を検証するために、全国の20~60代の男女5000名(各年代男女500名ずつ)を対象にインターネット調査を実施した。
では、どのような調査結果が出たのだろうか。次の3つの結果が示されている。*2
①本(紙媒体)を読まなくなった人は、年代に関係なく増加している。
②一方で、携帯電話やスマートフォン、タブレットなどのスマートデバイスを用いて本を読む人の割合は増えている。
③読書のツールに関係なく、読書している人はしていない傾向がある人よりも意識・非認知能力が高い傾向があるが、本(紙媒体)で読書している人の意識・非認知能力は最も高い傾向がある。
2月5日付の本欄“「デジタル読解力不足」論と電子出版”で「デジタル読解力」という言葉を取り上げ、読書や学習の機会へのデジタルの進出が推奨される傾向に対して疑問と危惧を投げかけたが、上記の調査結果から見えるのは、「読書が導く意識・非認知能力の育成は、アナログ(紙媒体)、デジタルを問わない」ということのようだ。
やっぱり、私たちにとって“読書”は欠かせないもの。そう思えてくる。
出版活動、そして出版産業について、このような角度から考えるのも悪くないと思う。
*1、*2はともに、独立行政法人 国立青少年教育振興機構『子供の頃の読書活動の効果に関する調査研究報告書[速報版]』による。