いま、東京の本屋さんたちが動画を作成し、YouTubeチャンネルで配信している。運営主体は東京都書店商業組合で、最盛期の1985年には1,426店もあった加盟書店が、昨2021年末時点で287店だという。書店数はここ30年で、およそ8割も減ったという。その現状を訴えつつ、本屋の良さを広くアピールしたいという目的で、それぞれの書店の歴史などを動画で紹介している。
全国で実働している書店数は、およそ10,000軒ほどで、その1割が東京に集中している。少なくなったとはいえ、まだ東京には書店が残っているのだ。しかし、都内であっても駅前に書店が1軒もない地域もある。
ネット通販や遠方の大型書店へ行けば、ほぼすべての欲しい本を買うことができる。ここ30年の傾向として、本屋の数は減少しているが、1店舗あたりの面積がどんどん増加している。何処で買っても同じ価格であれば、より多くの種類を一か所に集めれば、効率的だろう。しかし、お年寄りや子どもなどは、近所にある本屋で自由に買ったり読んだり出来たほうがいい。目的の本だけ買うのでなく、棚にある本の並びも意味があり、奥が深い。「この本屋はなんで、この本を売りたいのか?」と思うこともある。だから、本はどこで買うかが、とても大事だと思う。
「減っているのは本屋だけじゃない。八百屋も花屋も減っている」と、反論もされる。しかし、本は単なるモノではなく、それぞれの個人が必要とする知識や楽しみを伝える、文化的な側面をもつ。客観的な価値を定めることができない商材だからこそ、実際に手に取って、開いて、中を見て本を選びたい。筆者は切にそう思う。
流通面でも、書店がなくなった場所にもう一度つくるのは資金や人材の点でも非常に難しい。書物は、限られた一部の人が楽しむ「特別な趣味」ではなく、いつでも触れ合える身近な存在であり続けてほしい。