今回の改正はさらに、個人情報の外国を含む第三者への提供についても、踏み込んだものになっている。改正に先立ち個人情報保護委員会は、昨年末から今年にかけての1か月、「制度改正大綱」についてのパブリックコメントを実施した。その時も基本的な考え方として、「ビジネスモデルのイノベーション」が強く打ち出されており、「パーソナルデータの利活用」が謳われていた。この利活用は、データが国境を意識することなく自由に行き来することを前提としているので、個人情報に対する私たちの理解も、日本国内だけのことではないという意識に立つことが重要である。
併せて情報銀行についても考える必要がある。情報銀行については2018年の秋にこの欄で言及したが、その後、確実に進行している。情報銀行の認定事業は国の指針のもとで民間団体が行い、一般認定とP認定という二種類の認定が行われているが、2020年3月の時点で、1つの企業が一般認定、4つの企業がP認定を受けている。一般認定を受けた企業の事業内容を見ると、データを提供する個人と、データを活用したい企業との間に位置し、個人からのデータ提供と企業からのサービスや便益を仲介する形になっている。このサービスや便益は、積極的に評価をすればデータ提供の「報酬」なのかもしれないが、個人情報を提供するという重要さを考えると、データ提供の「代償」というほうが適切かもしれない。
国は情報銀行やマイナンバーカードの普及に積極的だが、情報漏洩の危険性は常に付きまとっている。個人情報を提供してサービスや便益を得ることは、個人情報を売ることに他ならないのではないだろうか。
あなたは「個人情報」をいくらで売りますか?(出版研究室主任研究員・前田能成/『出版労連』2020年10月1日‐1579号より)