「個人情報」いくらで売りますか?(1)(出版研究室から[36])

改正個人情報保護法が6月12日に公布された。改正の中身を見てみると、EUのGDPRとの関係での見直しが中心のように思われる。しかし、GDPRでは「個人データ」を「識別された自然人または識別可能な自然人」つまり、オンライン識別子(クッキーやIPアドレスなど)も含め、複数の要素を参照しなければ識別されうる状態にならない情報にまで条件を広げているのに対し、個人情報保護法の「個人情報」の定義は、従来通りオンライン識別子は対象にしておらず、他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものであり、容易に識別できることを認めたままである。※GDPRでは「個人データ」、個人情報保護法では「個人情報」という捉え方をしている。後者でも「個人データ」は定義されているが、前者とは意味が異なる。

今回の改正で気になるのは、「データの利活用」に力を入れている点である。そのために新たに「仮名加工情報」を設定した。法律の条文によると「仮名加工情報」とは、「他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報」を言う。このように仮名加工された情報は、「仮名加工情報取扱事業者」による利用が可能になる。今回の法改正では、利用停止・消去等の個人の請求権や業者が保有するデータの開示請求等、個人の権利が拡大されている。これはGDPRに近づいているのだが、その一方で仮名加工した情報には、「イノベーションを促進する観点から」という理由を付けて、開示・利用停止請求への対応等の義務が緩和されている。(出版研究室主任研究員・前田能成/『出版労連』2020年9月1日‐1578号より)

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