何かと世間を騒がせているAmazonである。直近では、7月21日に創業者のジェフ・ベゾス氏が民間人として初めての宇宙旅行を楽しんだというニュースがNHKを始め、派手にメディアで取り上げられた。そのいっぽうで、5月27日の日本経済新聞によれば「アマゾンは外部の販売者や消費者を犠牲にして自社の利益を最大化し、競争を害している」として米独禁当局はAmazonを「価格拘束」の疑いで提訴したことが報道された。
ベゾス氏は書籍の通信販売から商売を始めた。以来、あらゆるジャンルの商品を流通販売システムに乗せて世界でも屈指の企業とした。書籍じたいで大きな利益を得ることを考えていたのではなく、それを起点として顧客となった消費者に他の商品を購入させることで企業を爆発的に大きくしていったと言われている。しかし書籍はベゾス氏の起業の原点であるがゆえにAmazonとしての利益の度合いに関係なく大事にしているジャンルだと言われている。仕入れ方法や売り方の問題は別にして、出版を生業としている者としてベゾス氏が、書籍にたいして強い思いを抱いていることにモヤモヤ感はありつつもほっこりする。いや、ほっこりはするがモヤモヤ感が残ると表現した方が正確か。
4月10日の日本経済新聞や朝日新聞の夕刊記事に「アマゾン労組結成 否決」(日経)、「アマゾン労組結成 反対多数で否決へ」(朝日)とある。アメリカにおける労働組合結成は日本のそれとシステムが違うので、理解しづらい。ごく簡単に説明しておこう。アメリカで組合を結成するには、産別組織(出版労連のようなもの)が個別職場(企業)の従業員に組合結成の賛否を問う投票をおこない、賛成が過半数を超えると組合結成が認められる、というものである。
Amazonにおける健康を害する労働の過酷さとあくどい労務管理の厳しさは、本国だけではない。世界各地にあるAmazon○○(←国名)に共通している(具体的なことは省略)。正式投票前におこなわれた組合結成署名で過半数を超える数が集まっていたことに危機感をもったAmazon経営は、2か月間の投票期間中、会社側の説明会(反労組集会)で「Amazonの待遇の良さ」をくり返し宣伝するいっぽうで、「組合費は強制敵に徴収される」「団交をやれば、現にある福利厚生は無効となる」などの妨害キャンペーンをくり返したあげく、投票監視までおこなったそうである。その結果が上記の記事である。
しかし8月2日には「全米労働関係委員会」が「反対票が多数になるようアマゾン側が不当に干渉していたとして、投票のやり直しを勧告」した(8月4日付「しんぶん赤旗」)。
出版物を扱っているからといって、Amazon経営者に人間らしく働ける職場と権利を主張できる職場を保障してほしいと願うのは筆者がお人好し過ぎるだろうか。