書店業務の肉体的過酷さは良く知られている。職業病ともいえる腰痛、腱鞘炎、手荒れ等々。では、賃金・労働条件面ではどうかというと、いわゆる正味問題から出てくる小売り=書店の利益率の低さゆえに厳しい多くの経営が困難な経営状態にある。その結果、驚くほど「働きに比して見合わない」条件で働いている書店従業員が少なくない。正規非正規を問わずである。
出版流通問題が業界の最重要問題の一つとなっているなかで、正味問題も浮上して業界あげてとりくみを模索・実行しているが、書店従業員の待遇改善にはほど遠い。
そんななか、『新文化』(6/30付)のコラム「本を手渡す人」を読んだ。府中市にあるマルジナリア書店の代表(店主)である小林えみさんが淡々と言葉を綴られている。今流行り的にいうならば胸に刺さる。タイトルが「『本が好き』の明暗」とある。「利益が少ない書店の厳しい状況は、非正規労働や過重労働など、誰かが無理をしつつ『本が好き』という気持ちで回している」と。ドキッとさせられる…。「『本が好き』の犠牲になるのではなく、本を通じて、関わった人たちの幸福度が高くなる業界であることを望んでいます」と結んでいる。
「誰かが無理をしつつ」という言葉は重たい。書店つながりで思い出したことがある。昔、日書連訪問時に「『出版社は何万部売れた』とか『ベストセラーが云々』と顔の見えない読者を数字で表現するが、小売書店が相手にするのは一人ひとりなんですよ。それが積み重なって何冊買ってもらったと考えるんです」と言われた。
ところでタイトルにあげたもう一つの「業界人の本音と建て前」について簡単に記す。出版業界がそれぞれの立場で、お互いに協力しながら一生懸命とりくんでいることは伝わってくる。そのいっぽうで、妙な話も聞こえてくる。某業界人が、或る書店にたいするアドバイス?で「このままいけばこの店は保たない」。とここまでは良い。しかしそれに続いて「リアル書店の将来はないから書店以外の不動産活用を積極推進したほうがいい」といったという話が漏れ聞こえてきた。。判らんじゃない、確かに。しかしその言葉は、経営者はさておき必死にもがいている書店従業員にどう響くだろうか。その言い草はないだろうというのが率直な気持ちである。言い過ぎだろうか…。