「2020年は『出版の危機』のど真ん中になるだろう」。これは、本機関紙2020年新年号の本コラムの書き出しである。
突如襲ってきた新型コロナウイルス。それは人間の社会活動すべての領域にわたって「禍」をもたらした。数字上、出版産業は今のところ大きなダメージを受けていない。むしろ「巣ごもり特需」などと言われ、出版物の「健闘」がニュース等で取り上げられることも少なくない。
言われている「出版の危機」は、「出版流通の危機」と同義である。世界に冠たる日本の出版流通のほころびを、トーハン=日販は協業化を一手段として打開することを決め、実施に移し始めている。このことに関する出版研究室としての取材や研究が不十分であったことは否めない。流通代行業者からの情報も今年は入手できなかった。
出版研究室は、HPでの情報発信を活動の主軸に置いている。昨年「出版産業、気になる話題」を、今年に入って「『本』の本棚」を、トップページから訪問してもらえるようにプチリニューアルを行った。後者は、「本」(雑誌を含む)を題材とした本を紹介するコーナーである。新刊だけでなく、ひっそりと本棚の隅っこに居た本の「今こそ読め!」自己アピールを受けとめてささやかに紹介したりしている。
機関紙で読み損ねた「出版研究室から」もすべてHPに納めている。「出版文化をめぐる」という新コーナーも準備している。東京だけではなく全国各地から出版文化について紹介していく企画である。お楽しみあれ!
深刻の度合いを増している表現の自由、監視社会への突進等々、警鐘を鳴らすための研究と的確な分析の必要性を痛感した一年でもあった。
(出版研究室室長・平川修一/『出版労連』2020年12月1日‐1581号より)