2020年は「出版の危機」のど真ん中になるだろう。経済的と文化的の両面からそう考える。
前者は、全産業的問題となっている「物流危機」の出版における流通の危機である。昨年末に開かれた出版流通改善協議会主催の「『再販関連』説明会」で実質的なテーマが出版流通問題だったことが象徴的だった。相賀昌宏委員長の「出版流通の危機は出版の危機」発言が重たい。
後者は、表現活動への「圧力」と生産物=本の質の問題である。目に余る公文書管理の問題は出版の社会的役割を考えた場合見逃せない。他方で、質の問題は、出版倫理綱領・雑誌編集倫理綱領に照らしてみる必要がある。強い権力へのおもねりや売り上げ至上主義にもとづく本づくり等々、危機は主体の側にもあるのではないだろうか。
年末にある大先輩から「出版」について話をうかがう機会を得た。彼は「多面的労使関係づくりを考えて出版労連として産業問題に向かった」と。筆者の胸につっかえていたものがスーッと落ちていく思いだった。産業別労働組合である出版労連としての役割のひとつに、産業課題が位置づく根拠だ。1997年の本にある一文は今なお真実である。「21世紀の出版、出版文化を見出していかない限り、そこには産業としての出版の惨めな行く末しか描きようがない」(『出版』大月書店)。
知をわがものとすべく出帆した船は、いま大荒れの海を進んでいる。難破せず出版の社会的使命を果たす産業としての蘇生~飛翔を願い、言葉と風を大切に出版研究室としての役割を果たしていきたい。HPの新コーナー「出版産業、気になる話題」をぜひ訪ねてきてほしい。
*……出版労連結成60周年記念誌タイトル
(出版研究室室長・平川修一/『出版労連』2020年1月1日‐1570号より)