2022年3月に『近代出版研究』の創刊号が出た。発行は近代出版研究所で、皓星社の発売である。300ページ近いボリュームがある。冒頭に所収されている研究会メンバーによる座談会からは、創刊の熱い意気込みが伝わってくる。本誌の発売を担った皓星社の会長藤巻修一氏の「出版社は明治初期メディア転換期においてどのように対処したのか。現代の変革に我社が処するに当たり参考としたい」という問題意識があり、明治初期出版史に通暁する稲岡勝氏を招いて、「明治期に活躍した出版社の近代性とは何か」をテーマに語りあった内容である。
以下、目次は「「立ち読み」の歴史」、「古本の記憶」、「日記のすき間から掘り出す近代日本出版史」・・・と、まさに近代の出版に関わる事項が続いている。創刊を企画した当初の2倍の分量になったとのことだが、創刊に費やした思いの質と量がわかる。
出版の歴史と言えば、やはり戦後の歴史がテーマになることが多い。そもそも明治期の
出版についての研究書などを目にする機会は少ない。それだけに、本誌の発行の意義や目的は特筆されるものと思われる。
2022年の出版物の売り上げは1兆3千億円、戦後の最高期は1996年で2兆6千億円。
24年間で半減している。「現代の変革にどのように対応していくのか」。これはすべての出版関係者が関心を持つテーマである。明治期から大正へ、それから戦前と戦中の思想や表現活動の規制や自粛の時代、戦後の民主主義をもとに成長した出版産業と言われてきたが、オイルショックを経験し、さらにインターネットの普及とデジタル化の進行、SDGs・・・等々で出版に限らず紙や印刷媒体のありようが様変わりしている。このときに『近代出版研究』誌が創刊された。過去の歴史と将来を見据えたものとして読んだ。
創刊から1年近く経った。第2号の準備も鋭意進められていると思う。変革に処する論考を期待したい。
本の仙人
【追記】待望の第2号が4月に発行されるとのこと。楽しみである。