日本全国で書店の減少に歯止めがかからない。それも大型書店の撤退、閉店が相次いでいる。このコーナーでも今年1月にジュンク堂書店の京都四条通り店と名古屋店の閉店を取り上げた。昨2019年末に発表になっていたことではあるが、同じジュンク堂書店の福岡店と紀伊国屋書店天神イムズ店が2021年にかけて閉店する。また、同じ地域にあるメトロ書店ソラリアステージも撤退を発表したそうだ。産経新聞が3月3日付でこんな記事を配信していた。
ただし、今回のジュンク堂の閉店の理由は、町の再開発に伴って入居しているビルの立て直しのためという。いわゆる売り上げ減や経営環境の悪化によるものではないそうだ。
福岡市の天神地区というのは、福岡市内で最もにぎやかな繁華街である。現在東京に住んでいる、福岡出身の出版人にこのことを話したところ「え~⁈ ショック! 書店崩壊やねぇ…」と悲しそうな顔をした。天神地区から大型書店が3つも消え、その客は果たしてJR博多駅地区の他の書店へ足を向けるだろうか、という心配もあるそうだ。ネット書店への依存度が高まったり、そもそも本という文化そのものから離れていったりする危険性はないのだろうか。
出版物流の問題は、日に日に深刻になっている。トーハンと日販の協業化の具体化の問題は別途取り上げようと考えている。そして、出版物流のもう一つの問題である書店の減少問題、つまり書店経営が成り立っていかない出版の流通問題という否定的な現実問題はもはやゆっくり論じている段階ではないだろう。書店で生活を成り立たせている人々の問題にとどまらず、出版文化の送り手としての社会的意義をもつ書店が、北極圏の氷のように年々劇的に消えていくことをただただ見ているわけにはいかない。