『週刊金曜日』(以下、『金曜日』)が年末年始合併号で絵本特集を組んだ。「えっ、『金曜日』が?」と意外な感じを抱きながらページをめくっていった。中扉に「絵本には、普遍的な魅力がたくさん詰まっています」とある。「なるほど」と同時に「う~ん、ムムム」である。
『金曜日』編集部曰く「コロナ禍で普遍的な価値が見直されているのではないか」と。落合恵子さんは「絵本は年齢からも、セクシュアリティからも、言語からも自由なもの」と語り、公立図書館員の高橋泰代さんは「絵本は子どもの心と言葉を育てます~想像力を育むのは、生きる力を育てることにつながる」と話しておられる。最近では絵本を買い求める大人が少なくないという。筆者も30歳の時買った『のらいぬ』という絵本を時折開く楽しみをもっている。
「巣ごもり需要」当初、学習ものと絵本が良く売れた。〝勉強〟を補強するために親御さんが書店に走った。しかし、土井章史さんは言う。「絵本は『教育のためのツールではない』」と。或る絵本編集者に聞いたところ、最近は「自分の子どもの役に立つかどうか」という基準で本を選ぶ親が多いそうだ。親=おとなの価値観で絵本選びがなされている、と。子どもを育てるとはどういうことか考えさせられる。子どもの価値観をどう考えるか。
冒頭の「普遍」に戻るが、「コロナ禍で普遍的な価値が見直されている」時代にあって「現状の日本社会の劣化を立て直す力は文化面にこそあるのではないか。遠回りでも、絵本に親しむことがこの国を立て直す一助になって欲しい」は企画された編集者の言葉。別の編集者は絵本に出版の可能性を語る。
なお、出版研究室HP「出版産業、気になる話題」も合わせて読んでいただきたい。
(出版研究室室長・平川修一/『出版労連』2022年2月1日‐1595号より)