出版社の通販事業の「本気度」は何をもたらすか?!

12月7日の産経新聞の記事「出版界、脱紙媒体を模索~グルメ販売 街歩き講座 貸しスペース」を読んで、気になりだしたので取り上げることにする。

半年以上前に業界通の方にお話を伺っていた際のことだ。「いま各出版社は本を売るだけじゃなくいろんなものを売ってることをご存じですか?」と問いかけられたのだ。「通販ですよ、ツーハン!」と言われ、出版社によっては売り上げの15%超となっているとか! 確かに、雑誌、特に月刊誌を見ると噂の商品や流行りのグッズの紹介のページかと思いきや、よくよく見ると販売をしているではないか。ご丁寧に払込取扱票まで付いている。通販会社に注文するのではなく、その雑誌の発行元の版元に直接注文するシステムになっているのだ。んなことも知らなかったのか⁈ と笑われそうだが、恥ずかしながらその通りなのであった。他産業における異業種参入は、それは良く耳にするし目にする。出版産業の場合、不動産業は王道と言える。また取次の指導もあり、書店に喫茶店併設などもよくある。

上記の産経新聞では、文藝春秋が運営する食の取り寄せサイト「文春マルシェ」が紹介されている。少し前だが8月20日の日本流通産業新聞では「特集出版社の通販・ネット戦略」という記事を組んでいる。本文の冒頭で「『ステイホーム』が叫ばれるようになってから、通販を手掛ける出版社各社では」と、すでに多くの出版社が、これを柱の一本として考えていることがうかがえる記事があった。ハースト婦人画報社や竹書房、新潮社の取り組みを詳細に伝えている。通販雑誌NO.1と言われる『ハルメク』は「ハルメクのバッグ売上NO.1」と新聞広告でトートバッグの販売を大きく宣伝している。「ハルメクのバッグ売上NO.1」と。

今のところ全体としてコロナ禍の影響は少ないと言われる出版社だが、個々の経営の維持存続は生半可なことではないことと思う。基本的にはコンテンツ産業である出版社が、自社の媒体を活用してモノの販売業へチャレンジする動きが作り手と読者の主客にどう影響を与えるか、じっくりと見ていきたい。