出版労連に期待する/清田義昭(出版ニュース社代表)

いま、出版界は大きな転換点にあると、いくつかの事例でいえる。日本書店商業組合連合会(日書連)の会員数の減少がある。2018年4月1日現在の会員数は3249店となっている。前年同期より255店減少し、年間約1割の減少傾向が続いている。これは日書連の会員であるが、日書連以外でもいえるので、街場の小書店が消えているわけだ。書店(販売拠点)が減れば全体の売り上げも減少する。

原因は、出版物が売れないことにつきる。平均的な小書店の品揃えは雑誌・コミックス・文庫・新書・学参と一部のベストセラー本である。いわば定期刊行物であり、これが売り上げの7割8割を占めている。この定期的な出版物の不振で深刻な影響を受けている。出版不況は端的にいえば雑誌不況である。79年以来、雑誌を中心に伸長してきた業界だが、2017年に雑誌と書籍の販売実績が逆転し、〝雑高書低〟から〝書高雑低〟になった。その書籍も雑誌の流通に乗った販売システムが影響を受けている。とはいっても減少幅は雑誌ほどではないが、書店の減少で書籍の先行きも不透明だ。

書店数の減少要因にネット書店のアマゾンジャパンがある。読者はリアル書店に行かずにどんな本でもネット注文で容易に入手できる。しかも、会員には無料で早く届く。読者にとっては利用しない手はないのが本音だろう。いまや書店がアマゾンに対抗することは難しい。だが、それでいいのか、である。

業界のなかには中小書店はもうダメだと見る人たちがいる。それは、日書連をさしていると思われる。たしかに、20年前、10年前の日書連とは違っている。私は、今後の出版界を考えるうえで重要なことは、なぜ中小書店が消えているのかを視点にすることだと思う。ここに問題解決の糸口がある。2016年に日書連がまとめた「全国小売書店経営実態調査報告書」を分析するなかにそれがある。客数・客単価が減少した。ネットの影響、正味30%、地域密着化、再販制の擁護、客注品迅速確実化、後継者問題などの課題を真摯に検討する必要がある。日書連も委員会をつくり、具体的に動きはじめている。しかし、一方で書店の実態を客観的に観察し分析する場やあるいは研究をする人たちや組織があるかという問題がある。そのような場として、私は出版労連に期待する。出版労連は、出版社、取次、書店あるいは関連団体との連携の拠点であると思うからである、ある意味では客観的立場から発言できるといってよい。

かつて言われた業界三者といういい方、あるいは三位一体などという考え方はいまや崩れているといわれる。そういう見方もある。しかし、現実には三者の問題である。また、三者に、著者、読者の存在を考慮することが問題を解くうえで不可欠だと思う。業界での議論は理念的というよりは、極めて現実的、実利的なものになってしまう。したがって具体的な提案が出しにくい面があるし出てもそれをめぐって賛否がでてまとまらないことが多い。

当面の問題として、率直にいって、アマゾンに対抗するといっても現実的ではない。共存する道はあるのかを模索することも必要だろう。そういう点についても研究することも重要だと思う。

出版労連は60年の歴史のなかで、これほど大きな転換点に直面したことはなかったのではないか。だからこそ、問題・課題解決のために智慧を出しあって研究、運動をする価値がある。

業界をとりまく政治、経済、教育状況にも大きな変化がおこるなかで、それらをふまえた論を立てていかなければ解決しないこともたしかだ。その役割として出版労連のこれからの運動に期待する。