PISA2018(OECD生徒の学習到達度調査)の結果発表によると、日本の子どもの読解力がまた落ちてしまったそうである(日経新聞1/27朝刊)。「また」というのは、2000年代初頭にも同様の結果が出たことがあったからだ。その時は「ゆとり教育」が原因とされ、以降その否定が推進されてトップに返り咲いたとされる過去があるからだ。
しかし、今回のそれはチト違うようだ。記事によると、読解力とデジタルの関係らしい。となると、教育の問題としてだけではなく、文字・活字産業の問題、なかんずく出版の問題としても考える必要があるのではないだろうか。この言葉を目にすると、筆者世代の人間は「スマホばかりいじってると長い文章を読み解く力がつかないことを言ってるんだろうなぁ」と思ってしまう。が、そういうことではないようだ。「デジタル読解力」という言葉が出てくる。細かい説明は省くが、要するにデジタル機器を使いこなしていないということらしい。ゲームはやるが学習に取り入れていない日本の子どもたちの問題。家庭の経済的状況からくる文化面での劣りなども背景にあるらしい。ここらは教育の問題の範疇だろう。
翻って2019年の出版物の推定販売金額は、紙は昨年も減ったいっぽう、電子が好調で売上増に大きく寄与しているとの数字が発表された(『出版月報』1月号)。先の日経新聞に記事に寄せた研究者は、「紙と鉛筆の時代は変わりつつある」「日本の学校教育がデジタル化社会への対応に失敗している」と結論づけてもいる。
次のような考えは杞憂だろうか。子どものデジタル読解力向上には、学習や日常生活にもっとコンピュータ活用を取り入れる、つまりデジタル機器の利用時間を増やすべきだという声が大きくなり、デジタル世界以外での思考を鍛えるための読書や学習が軽んじられる方向に行ってしまうのではないか、と。昨年末に国立青少年教育振興機構が発表した「子供の頃の読書活動の効果に関する調査研究報告(速報版)」をご存知だろうか。大変興味深い内容である。近々、出版研究室として解説する予定である。乞うご期待!
【追記】
2月5日の東京新聞によれば、政府は子どものパソコン活用を強力に進めるようだ。小中学生に行っている学力テストの解答方式を実機からパソコン入力へと切り替えることで進めようという考えらしい。本文で触れた「デジタル機器」使いこなし力アップと連動してはいまいか。