ジョディ・カンターがくれたヒント(出版研究室から[38])

編集者って、どんなことするの? そう聞かれると、意外に説明が難しい……と思っていたら、ヒントがここに!

「記者というのは、自分の記事がどう受け取られるかまで予測できません。できるのは、証拠を積み重ねて、読む人が『オーセンティック(本物)』と思える記事を目指すことだけ。」(『朝日新聞』10月14日付「#MeToo」への共感 記者のペンから、ジョディ・カンター記者インタビューより抜粋)

編集者自身がモノを書くことは多くないけれど、原稿を読むときに、何を核とするのか、ブレてはいけないことは何か、そんな視点をもちながら、内容を練っていくはず。

この場合、ノンフィクションならもちろん、証拠の積み重ねと検証は不可欠。フィクションだって、必要に応じて取材や検証はする。でもどんなジャンルの本であれ、大切なのは、読者に真摯に向き合うということじゃないかと思ったりする。証拠の積み重ねや検証って、読み手を下に見ない、ごまかさないってことだよね……と。

そんな作る側の姿勢が、読む人に「本物」を感じさせるのでは? と思いつつ、翻ってみると、新刊すべてにそれだけのエネルギーをかけている? いやいや、かけられる? もっと時間があれば完璧と思える本は作れる? 売り上げのため……というプレッシャーがなければ、もっと読者のことを考えられる? ああ、悩ましい……。

ともかくも、今はジョディ・カンター記者が与えてくれたヒント「読む人が『本物』と思える本を目指すことだけ」が編集者の仕事と思っておこうかな。(出版研究室・當田マスミ/『出版労連』2020年11月1日‐1580号より)