出版産業の危機は産業構造に要因の一つがあるといわれる。出版物は出版社、取次、書店の三者をとおして読者に届けられている。しかし、これが「届けられていた」と過去形になる時代が来るかもしれない。
出版物の売り上げが雑高書低から書高雑低に逆転した。年々雑誌やコミックの売り上げが減少している。
理由は紙媒体からデジタル化がある。また、書店の転廃業による減少と読者がアマゾンを利用している実態がある。
アマゾンと版元、アマゾンと読者というように、これまであたり前であった取次、書店を介在することなく、出版物が読者に届くルートができている。また、出版物の売り上げの構成は雑誌の比率が高く、いわゆる雑高書低が続いていた。これを前提とした取次の設備やシステムが、書高雑低への変化に対応できないばかりかメンテナンスのコストがのしかかっているのが現状である。
雑誌やコミックは週刊、月刊などの定期刊行物で安定した売り上げが見込め、安定した入出庫作業量や輸送業務が伴う。また、作業内容は機械化で一括大量の処理ができる。しかし、書店からの書籍の注文には、人間の手が必要になる。この作業に従事しているのが下請け企業の非正規労働である。
出版ユニオンには、大手取次の下請け企業(日販王子=SLA)、(トーハン=コバヤシユニオンズ)の非正規労働者が加盟している。
今春闘では、それぞれに賃上げや労働条件の要求を出して交渉をしている。労働者の賃金はいずれも最低賃金(東京、埼玉)である。
(次号に続く/出版研究室長・橘田源二)〔『出版労連』1551号/2018年6月1日より〕