現代書館 菊地泰博さんインタビュー Vol.3

Amazonのシェア拡大と版元の実情

――最近のAmazonについてはどのように見ておられますか、実情はいかがでしょうか。

菊地:Amazonの取引のやり方はひどいですね。何回も直取引を迫ってきます。週に1回ぐらい連絡がきます。それに今週の引き当て率は何%で在庫切れは何々ですときますよ。最初はどうしたものかと心配したけど、今では慣れてきて、少し馬鹿らしくなってきました。Amazonは必要な時だけ一方的にメールか電話が来ます。取引というのは、お互いに顔をあわせてするもので、電話をすることもあるでしょうが、Amazonはそうではありません。電話は通じないのです。こちらからは全てメールです。Amazonが用事のあるときだけメールが来ます。当方のメールにはなかなか返事がないのです。だから信用できないと声を大にして言いたいです。酷い会社ですよ。

――産業全体が厳しくなっていますが、営業活動はどのようにされているのですか。営業担当者は何人ぐらいいるのですか。また産業全体をどのように見ていますか。

菊地:弊社の営業は3人です。毎日書店回りをしています。北海道から沖縄まで行きますよ。昔から行っていました。弊社でも売れるシリーズ物があり、それはかなり売れました。そういう時代もあったということです。
その当時からみたら相当落ちています。順風満帆な時を100とすると今は80よりもっと落ちています。昔は儲かったような気がしていましたが、正直なところ今では収支を合わせるのは大変です。新刊は絶対に必要で月平均5点、年間60点程度です。「とにかく新刊を入れていかなければ回らない」という話をよく耳にします。「返品が増えるだけじゃないですか」と聞くと、「もう返品なんて考えてはいられない、とりあえず作って……」というのが実態です。
老舗の出版社は、とにかく本の形で新刊を取次に入れれば半額が入る、内払いというシステムがある。しかし、弊社には取次からの内払いがないのです。取次との関係での出版社格差は大きいですよ。

 

現代書館 菊地泰博さんインタビュー Vol.1
現代書館 菊地泰博さんインタビュー Vol.2
現代書館 菊地泰博さんインタビュー Vol.3
現代書館 菊地泰博さんインタビュー Vol.4
現代書館 菊地泰博さんインタビュー Vol.5