現代書館 菊地泰博さんインタビュー Vol.2

デジタル化への対応

――デジタルの時代になりました。デジタル化は出版関連産業が直面している課題だと思います。菊地さんはどのようにお考えですか。

菊地:今の本は紙媒体そのもので読むことができます。しかしデジタルは何か画面で視覚化させることが必要です。そこが大きな違いですね。紙媒体はソフトとハードが一体です。なぜ活字が大切か、書籍が大切かというのはそれが原点です。コンピュータは電気が切れたら視覚化できないので終わりです。

――デジタル化の最初はフロッピーなどがありましたが、もうこのディスクを読み込む機械がありません。

菊地:古い本で、データでも残しているものがたくさんあります。ですが、言われるようにフロッピーは読めませんよね。印刷業界も大きく変わってフィルムから刷版しての印刷がほとんどできません。もちろん対応する印刷屋さんもまだありますが、弊社の取引先だともうできません。新たにデータ化しなければなりません。その過程で文字化けがあるため精密な校正が必要です。
弊社のような文字が主体の出版社はまだいいですが、児童書や絵本は大変なようです。児童書は息が長いので、古いものはデジタル化に対応できなくなって大変だそうです。最初から作り直さなければならないものもあるでしょうし。大きな転換点ですね。
これまでの紙の印刷は斜陽で業界自体の稼働社もかなり減りました。昔の機械を大事に使うということでは技術革新に対応できない、新しい機械で設備投資をしていかないと生き残れない。だから紙に印刷することが縮小している。超大手印刷の大日本やトッパンなどは印刷といっても、紙に印刷して稼ぐのは減少し、今は全然違う別の業態です。これまでの印刷会社じゃないですよ。

――新刊を出すときはデジタル版も同時に作られているのですか。

菊地:もちろん全部データで保存しています。デジタルで何点か出していますが基本は紙です。
東日本大震災の際、書協を中心に経産省の資金助成で業界あげてデジタル化を進めました。しかし弊社は一切助成金を受けませんでした。この資金の実態は、東北大震災の復興を口実に書籍のデジタル化を進めようと資金をぶんどったもの、と私は理解しています。
最初は東北関係の書籍だけ、という話だったのですが、助成を受けようという会社が少なく、次第に何でもよくなって、助成金を使い切った。宮城県出身の私としては、あまりのでたらめさに腹が立ち一切断りました。

――出版契約をされるときはデジタル化も含めているのですか。

菊地:契約書にはデジタル化も入れています。弊社の出版物ではデジタル版は売れないです。私の友人で、例えば『地球の歩き方』を外国旅行には必要な部分を破って持って行っている者がいました。二度と使わないので。こういうものはデジタルでもいいと思います。端末で楽でしょう。ただ、それで伸びると思ったけれども伸びてないようですね。
電子書籍は、たとえばAmazonから買ってもAmazonがなくなるとデータが消えますからね。だから自分の所有物ではないです。(紙の)本を買うのと違います。でも、あと10年ぐらいで変わるでしょうね。今からの子どもたちは生まれて最初の文字がデジタルということもあると思います。紙で読まなくなり、全部スマホになっていく……。最近驚いたのはパソコンをつかえない小学生がたくさんいるとのことです。もうキーボードにすら慣れていない。

 

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