前号で研究室設立後の話題、注目すべき事例を紹介したが、出版ニュース恒例の10大ニュースのトップにはマガジンハウスの『君たちはどう生きるか』が選ばれた。1937年の出版。以来、加筆訂正や版元も変遷した。80年を経てマンガ版がミリオンセラーになり、宮崎駿監督がアニメ化を計画している。
安倍政権が「戦後レジームからの脱却」を掲げ、実際に民主主義を破壊してきた。また、トランプ大統領の言動で国際間の緊張が高まっている。その時代、特に若い世代に『君たちはどう生きるか』が読まれる理由には、格差や貧困、不安のなかで将来への希望を見出すヒントを得たいという思いが背景にあるといわれている。これは出版物の役割と力であり、トップニュースになるのも頷ける。
今年は改憲の動きと国民投票法が問題になる。憲法に関する各メディアの姿勢は、どうあるべきかが問われる。政府は秘密保護法や共謀罪法を強行して言論、表現活動の規制を強化してきた。各メディアへの直接的な介入やメディア側の忖度、自粛、萎縮・・・・・・。まさにメディアの役割が問われる正念場である。出版の分野においても同様である。
研究室を開設してから図書、資料の収集、ホームページ開設の準備、業界関係者への取材などに着手した。今年も産業課題について関係者と議論を深めていく予定である。また、出版人の会、メディア関係有志の会とも連携して勉強会も企画したい。活動内容は本欄やホームページで紹介していく。
(出版研究室長・橘田源二)〔『出版労連』1546号/2018年1月1日より〕