表現の自由

表現の自由

 

アジア・太平洋戦争の時代、治安維持法のもとで言論、表現活動が弾圧され多数の犠牲者を出した横浜事件があります。戦後、私たちはその反省を込めて、「出版活動は平和な時代だからできる。平和憲法にも謳われている表現の自由を保障する憲法21条を変えさせてはいけない」と主張し、表現規制に反対し、平和の課題にとりくんできました。安倍政権下で進められてきた様々な法制度の改変に伴って、平和な時代を戦争の時代に変えようとする力が強くなりつつある今、出版活動の重要さをもっと認識すべき時ではないかと考えます。

仮に戦争の時代になったとしても、その戦争を止めさせるために、権力による弾圧や権力にすり寄る一部の言論に怯まず、出版活動を通して「戦争反対」の言論を展開していく必要があるのではないでしょうか。もちろん、そのような事態に至らないように、現在の状況にどのように向き合っていくべきか、考えたいと思います。

第一次安倍政権下で行われた教育基本法の改変(2006年)以降、出版労連も成立に反対して積極的にとりくんできた「表現の自由」に関わる重要な法律を以下に挙げてみます。
2013年:特定秘密保護法
2015年:戦争法(平和安全法制)
2016年:盗聴法(改正通信傍受法)
2017年:共謀罪法(改正組織犯罪処罰法)
これらは、盗聴法の採決を除くと、与党などの強行採決による成立でした。

しかし、結果的に強行採決は許したものの、この間の市民運動の盛り上がりは、安倍政権の強硬姿勢に対する牽制となりました。そしてさらに大きな成果として挙げられることは、2人の国連特別報告者、デビッド・ケイ氏(表現の自由)、ジョセフ・カナタチ氏(プライバシー)の発言や行動でした。両氏の行動は、国際的な視野からの問題提起であり、私たちが国内の視点だけで法律の賛否を唱えることの論理的な弱点を指摘するものでした。具体的には次のような点です。

特定秘密保護法の問題では「ツワネ原則」(国家の安全保障の秘密保護と国民の知る権利の確保について2013年に採択)が話題になりましたが、これは、国連の自由権規約19条との関係で言及されました。自由権規約19条は「表現の自由」を規定しています。カナタチ氏は共謀罪法の問題点をプライバシーと表現の自由の視点から指摘しています。これらはまさに国連が掲げる課題です。私たちもこれを契機に、「表現の自由」について、憲法と併せて国連の視点で考えていくことが重要だと考えます。

「表現の自由」と出版活動をめぐっては、異なる意見が飛び交うこともあります。たとえば、東京都の青少年健全育成条例「改正」や児童ポルノ法「改正」が問題になったとき、ヘイトスピーチ解消法(略称)が国会で審議されたときなどに、出版界の中では様々な意見が出され、議論が行われました。大雑把に述べると、「表現の自由」は絶対に規制してはならないという考え方と、「文字の暴力」や「言葉の暴力」という側面から「表現の自由」にも一定の規制が必要だという考え方の違いです。

また、海賊版サイトの存在とそのサイトへのアクセスがブロッキングされたことについても、憲法21条が保障する「通信の秘密」との関係で反対意見がある一方で、産業の利益を守るために必要だと歓迎する意見があります。

権力による表現規制の動きは、実質的なデモ規制という形でも起こっています。新宿区がデモの出発点として区内の公園を使用することを規制する基準を作りました。さらに、東京都が迷惑防止条例を「改正」し、警察の判断による「迷惑」の認定によって、市民の行動を制限することができるようにもなりました。

特定秘密保護法や共謀罪法などの憲法21条と相入れない法律が施行された今、私たちはもう一度、憲法21条に立ち返って、この条文が保障している内容について、理解を深めることが重要だと考えます。