出版研究集会

第48回出版研究集会 電子書籍分科会

オンライン参加者によるチャットでの質問と講師からの回答

 

2021年12月15日に行われた第48回出版研究集会「小規模出版社でも ☆彡 電子書籍を作れる・売れる ―中小零細出版社が電子書籍を出版するために―」にオンラインで参加してくださった方々から寄せられた「質問」と講師からの「回答」を、以下にお示しいたします。

お寄せいただいた質問については、分科会の運営担当者のほうで整理を行い、類似の質問などについては質問の趣旨に沿うように統合するなど、講師に質問内容を正確に伝えるために、文章表現・表記に手を加えた部分もあります。

ご了承ください。

2022年01月06日 出版労連 出版研究室

オンライン参加者からの質問 堀講師からの回答
1 電子書籍市場において漫画はかなり進んでいますが、例えばkindleをみると専門書の電子書籍はほとんど見受けられません。ただ大学の教科書電子化の流れもあり、今後専門書も電子化が広まっていくでしょうか? ニーズは漫画が高いです。それは若年層が漫画嗜好だからではないでしょうか。

弊社では漫画は制作していません。実用書や専門書、小説などを主体として制作しています。

実用書や専門書も電子書籍が増えていくと考えています。

紙の本と同時に電子本が提供され、iPad等の端末も普及し、読者が選択する時代になってきています。

2 視覚障障害者のためのテキスト提供を考えています。リフロー型でテキストを抽出すれば、それは視覚障害者用のテキストに流用できると考えてもよいでしょうか。 ePubはセキュリティ設定されていますので、TEXTは抽出できません。

しかし、制作過程でのTEXTは視覚障障害者のためのTEXTとして流用可能です。

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どうしてリフロー型で製作するとコストが高いのでしょうか。フィックス型と比べてどの程度高くなるのでしょうか。 リフロー型制作には制作時間が掛かりますので、FIX型制作に比べてコストは掛かります。

どの程度高くなるかは、内容にもよりますので一概に言及できません。

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1日で初校というのはかなり早いと思うのですが、InDesignからPDFやFIX型のePub作成といったケースでの話でしょうか。 「支給データ確認→制作→検査→納品」の流れで、リフロー型で早ければ1日で初校出し可能です。

サイマル(電子本を紙本と同時発売)が今後も多くなってきているため、電子書籍の初校出しも効率化が望まれています。

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電子化自体は簡単だというのは分かります。版元としては、要は電子書籍を出して採算が取れるかどうかという話だと思うのですが、実際のところ、PDF、FIX型のePub、ePubリフローでページ単価いくらくらいでしょうか。お答えいただける範囲でお教えください。 書籍制作内容(本文頁数、目次頁数、図版点数、注釈点数、索引リンクする/しないなど)によって異なりますが、

リフロー型は100~200円/頁、FIX型は5,000~15,000円と思われます。

図書館向けPDFは5,000~10,000円程度ではないでしょうか。

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電子書籍を作るのは簡単だということは、著者個人が自分自身で電子書籍を出してしまうのも簡単だということでしょうか。そうすると出版社の役割とは何なのか。将来的なこととして考えなくてはと思いました。感想です。 「電子書籍を作るのは簡単」というのは間違いです。

誰でも制作できるものではありません。それなりの知識が必要です。

著者や編集者が電子書籍を無料ツール等を使用して制作する時間を考えた場合、制作会社等に依頼した方が良いと考えます。

出版社の役割は、良い本を企画・編集・出版することと思います。

【出版研究室の考え】

分科会でご説明した出版契約書の雛型には、第8条に「完全原稿」という文言が出ています。著者が版元に「完全原稿」を渡すという前提です。しかし現実の場面では、版元の担当者(編集者など)が校正や校閲を行うなどして著者とやりとりをすることによって、著者の原稿が完全原稿に仕上がっていくという状況が、多くの出版社で作られているのではないでしょうか。

そのように考えると、そもそも本を作るということは、紙か電子かという議論とは全く別な問題と、位置づけたほうがよいのではないでしょうか。

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電子書籍の制作会社が各電子書店に卸すというシステムになっているのでしょうか。版元がデータを電子取次に納品するのは可能なのでしょうか。 それぞれの会社によって異なりますが、弊社は制作だけです。

版元に納品された電子書籍データを電子取次に手配するのは版元です。

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ほとんど文字だけで組み方も単純な本(現物)しかなくても、リフロー型のePubデータは作れるのでしょうか。 紙面をスキャンしてOCRでテキストを取り出すことで、文字だけの単純な組版の本でも、リフロー型、FIX型の制作は可能です。