出版に関する権利

出版に関する権利

 

出版物のデジタル化や国際的な条約などの関係から、この数年間、毎年のように著作権法が改正されています。2014年の改正では、電子書籍の増加に伴う出版権の整備という理由で、従来の紙媒体を中心とした出版とインターネット送信による電子出版を分け、それぞれに出版権の設定ができるようになりました。しかし、日本書籍出版協会(書協)などを中心として出版社が主張してきた出版社への著作隣接権の設定については見送られました。そして2018年には、「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した権利制限規定の整備」という名目で、著作物の利用に対する著作権者の許諾を必要とする範囲が狭められました。

国際的な関係では、アメリカが離脱する前のTPPの条約交渉に際して、著作権法の保護期間の延長や非親告罪化などが課題として挙げられていました。アメリカがTPP交渉から離脱しTPP11協定と変わり、日本ではTPP整備法が成立しました。その結果、著作権については以下の規定の整備を行うこととなりました。

・存続期間を50年から70年に延長する。
・アクセスコントロールの回避を著作権侵害行為とみなす。
・非親告罪化(著作権者等の告訴がなくても、著作権侵害を公訴できるようにすること)

共謀罪法との関係では、国会での法案審議の場で政府から、著作権法が親告罪であることから共謀罪の適用も親告罪になるとの答弁がされました。しかし今後の法整備によって非親告罪化された場合には、共謀罪法との関係で出版界にとっては深刻な問題となる可能性があります。

著作権の保護をめぐっては、現在も文化庁内で様々な角度から審議が行われています。文化審議会著作権分科会では、「使用料部会」、「著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会」、「法制・基本問題小委員会」、「国際小委員会」などが設置され、審議が進められています。

たとえば「法制・基本問題小委員会」では、「リーチサイト等への対応について」という議題で、インターネットのタダ読み誘導サイトへの対策が審議されています。インターネットでのタダ読みは、著作権侵害という問題に加え、出版界にとっては大きな経済的損失を招く問題です。「著作物等の適切な保護と利用・流通に関する小委員会」では、「クリエーターへの適切な対価還元について」という議題で、私的複製の存在とクリエーターの権利保護という課題が審議されています。

出版産業は著作者とその著作物を公表する出版社の両者が、健全な関係で連携することで成り立っています。私たちは今以上に著作権について関心を高め、それぞれの権利が守られるように努力することが大事ではないでしょうか。