業界に風、起こしたい(出版研究室から[15])

「出版研究室」。たいそうなネーミングだ……。先輩たちが構想した「出版研究所」に一歩でも近づけたいと2年前にスタートさせた。今年為した最大事は、ウェブサイトの立ち上げである。設立当初から、出版産業に関するあらゆることを研究・分析し情報発信していくことを活動の軸に据えていたのでホッとした。開設に安住せず、ビジターの意見に耳を傾けながらいいものにしていきたい。とはいえ、研究室のメンバーは研究室活動に十分な時間を充てることができないのが悩みだ。研究室員の増強は急務である。

出版産業の経済的側面の現状分析作業に比して、表現の自由の問題は、待ったなしだ。特定秘密保護法、共謀罪等々、ここ数年で踏み固められた憲法改正への足場。いよいよ、嵩にかかって表現の自由を強権的に圧迫し、知る権利を抑え込み、監視を強化する動きが強まっている。表現の自由の研究・実践に関わる人々との集いも旺盛に行った。TBS「サンデーモーニング」やNHK「ブラックリスト」のプロデューサー・ディレクター氏を招いての講演会、東京都新人権条例や埼玉俳句九条の会事件を考える会などの実現に力を尽くした。『新潮45』問題へのアプローチも独自性を発揮して取り組んだ。

出版労連60周年記念誌『風と言葉と出版』の企画編集作業は、行きつ戻りつの苦しくも楽しい作業であった。

2019年も出版業界に風を起こす出版研究室でありたい。

(出版研究室事務局長・平川修一)〔『出版労連』1557号/2018年12月1日より〕