大手取次協業化の影響は(出版研究室から[20])

出版業界で読まない人はいない業界誌『出版ニュース』が3月末で休刊となった。1949年11月の創刊から70年だが、出版業界の盛衰の象徴ともいえる(発行人・清田義昭氏には研究室のアドバイザーとして大変お世話になっている)。
『出版ニュース』は毎年10大ニュースを発表している。昨年のトップは「トーハンと日販の協業化」をあげた。
両社が今年の4月9日に内容を公表した。書籍・雑誌の返品処理と書籍新刊送品の業務を協業し、事業所の統廃合もうち出されている。今後の具体化に関しては、独禁法違反を警戒して公取委に報告、相談しながら進めるとしている。出版社、書店との取引条件の変更もありうる。背景には深刻な物流業界の事情がある。
研究室では流通問題を研究課題として、昨年2月に出版流通代行会社をヒアリングした(内容は本欄で紹介)。
1年後の今年の2月に再訪して話を聞いた。新たに商品管理を請け負う版元を増やし、アマゾンの需要に対応して業績を伸ばしたという。一方で2大取次との扱い量は減少しているという説明があった。
出版産業に地殻変動が起きている。書店、流通の危機が出版社に及ぶのは必至である。すでに雑誌売り上げ減、アダルト誌の規制など影響が出ており、流通問題の行方は、出版の多様性とも関係してくる。
出版労連の19年春闘はほぼ終息した。しかし取次の非正規労働者の時給は1円もアップしていない。また、拠点の統廃合の動き次第で雇用問題も起きかねない。
1975年10月31日の『朝日ジャーナル』に清田氏他の出版関係者の座談会が掲載されている。流通問題も含めて当時の課題と内容は、そのまま現在にも通用する。業界内の改革は進まず、約半世紀を経たいま、将来を見据えた議論が必要である。
(出版研究室室長・橘田源二)〔『出版労連』1562号/2019年5月1日より〕