地方に居して実感 豊かな出版活動(出版研究室から[41])

コロナ禍、日本中が外出を自粛し、自宅が職場になっている。そのリモートワークでも、評価制度で管理されている実態があるという。この状況下、「おうち時間の過ごし方」でいくつかのデータがある。上位はネットゲームやストレッチなどで総じて読書は下位にある。書店が休業を余儀なくされ、紙媒体の出版流通の危機はさらに深刻になっている。図書館も休館で、読書環境にも影響が出ている。

昨年はいっせい休校で、学参や児童書、大学の教科書などがコロナ特需と言われた。『鬼滅の刃』の牽引力も堅調だ。業界を支えてきているのは雑誌やコミックのウェブ版である。出版産業もコロナを契機にして、一気にデジタル化が進み、この数年の業界の様変わりに拍車がかかっている。DXにシフトした大手の好調さは流石と言いたいところである。

一方、デジタル化のなかで小零細の版元はどうなるだろうか。

東京中心の出版業界だが、京都、大阪以外の地方都市にもたくさんの版元があることを、地方に居を移して実感をもって知った(因みに岩波書店と筑摩書房の創業者は諏訪と塩尻の出身である)。

当地の地方紙は、書評欄で地域の文化や地方史の研究などに関する本を多く紹介している。この定価で初版は何部くらいか、採算は……、などとついつい考えてしまう。

しかし、地方色の濃い本にしたたかさを感ずる。版元の個性も強そうだし、広告にも意欲的な文字が並ぶ。出版に限らず大手メディアの影響がより強くなるなかで、地方には多様な出版活動が根付いている。

コロナの渦中、あらためて地方の時代と言われているが、豊かな文化を支える地方出版の活動とその意義に、今こそ目を向けて欲しいと思う。

(出版研究室・橘田源二/『出版労連』2021年2月1日‐1583号より)