児童書の評価内外で高く(出版研究室から[14])

2018年上半期(1月~6月)の出版物の推定販売金額が、出版科学研究所から発表されました。

紙の出版物の販売金額は6,702億円、前年同期比8.0%減で、マイナス幅がさらに拡大しているとのこと。内訳は書籍が3,810億円で同3.6%減、雑誌が2,892億円で同13.1%減と大幅な減少。また、電子出版市場の規模は1,125億円で前年同期比9.3%増、金額では96億円の増。内訳は、電子コミック864億円で同11.2%増、電子書籍153億円で同9.3%増、電子雑誌108億円で同3.6%減。

紙と電子を合わせると7,827億円、前年同期比5.8%減で、紙の落ち込みを電子でカバーできていません。

その中で、児童書の売上げは安定しています。1998年~2017年の児童書の売上げ比較では、1998年約700億円、2017年約864億円と、低い伸びではありますが下がってはいません。

毎年5月3日~5日まで上野の森で開かれている「上野の森親子ブックフェスタ」でも、今年の合計売上げが3,956万円と前年売上げを254万円も上回り、過去最高となりました。

日本の児童書は、近年国際的な評価も高く、1956年から2年に一度行われれている「児童書のノーベル賞」といわれる国際アンデルセン賞の作家賞を、1994年にまどみちおさんが、2014年に「守り人」シリーズの上橋菜穂子さんが、そして2018年には『魔女の宅急便』の角野英子さんが受賞しました。

堅調なジャンルなので、今まで児童書を発行していなかった会社も参入してきていますが、筆者は絵本の良いところは「ヘイト」がないところだと思います。今後も質の高い児童書が発行されることを願ってやみません。

(出版研究室副室長・小日向芳子)〔『出版労連』1556号/2018年11月1日より〕