2021年の出版界と出版研究室(出版研究室から[51])

湖に例えるならば、出版界の 2021年は各社が湖底で動いていたことも含めて一挙に湖面に形となって姿を現した一年であった。

販売額は巣ごもり需要もあり「出版不況脱出か」と思わせる数字を示した。単に雑誌・書籍の電子化にとどまらない出版DXでいえば、着実に進めてきた大手出版社が成果を出したいっぽうで、小規模出版社の遅れは明らかだ。

流通問題では「講小集丸連携」のニュースや、出版社との直取引を拡大し続けているアマゾンと講談社の取引開始が発表されるなどハッとさせられたニュースも多かった。

そして、書店の減退は深刻さの度合いを増している。第何次目かの〝出版の危機〟をはらんでいるようにも思える。

今春リニューアルしたHPは見やすくなったと評判がいい。出版研究室では、あらゆる方面に忖度を働かせる必要のない労働組合の一機関であることの強みを生かし、出版にかかわるあらゆることを独自の切り口で取り上げ、多種多様な情報の発信に励んできた。

特筆すべきは「『本』の本棚」で「浅井澄子『書籍市場の経済分析』の紹介」、「出版文化をめぐる」では「雪だるま式に増える教科書編集の仕事」という大型連載をやったことである。読み応えある両論考を未読の方は今すぐに訪ねてほしい(http://syukken.syuppan.net/)。

出版研究室は2017年出版労連中央執行委員会直属の機関としてスタートした。今期専門部の出版・産業対策部のなかの一機関として再編・組み入れられた。これにより出版産業の現状の分析・研究および表現の自由を大切にする視座からの情報発信が従来の役割だったが、出版労連の産業課題へのとりくみを直接サポートする任務が与えられたと身が引き締まる思いである。課題は研究員の獲得である。以上を確認して今年の振り返りとしたい。

(出版研究室室長・平川修一/『出版労連』2021年12月1日‐1593号より)