浅井澄子『書籍市場の経済分析』の紹介 その3   新 村  恭

「第2章 書籍の流通と価格拘束」を2回に分けて紹介する。流通の特徴について検討されるが、再販制の語はほとんど使われず、一貫して「価格拘束」とされる。「小売価格は、本来、小売店が設定するもの」であることは、経済学のベースであろう。

冒頭、「日本の書籍流通」が概略されるが、取次を要とする実態は出版人にはおおむね既知のことである。しかし、「消費者への販売の有無にかかわらず、搬入の翌月に代金の一部あるいは全額が支払われる」のは、商品として極めて特殊であることは深く認識しておく必要がある。何割払われるか第三者には不明としながら、出版学会編『白書出版産業』(2010年、文化通信)の取引条件についての記述を例示している。同白書には「委託配本金額の3,4,5,6割が、一部の社には7,8,9,10割が…支払われる」とある。3~6、7~10割としない、規定がなくさまざまであることを強調する書き方である。

返品、清算もからむ、不透明で魑魅魍魎といってもよい、取次支配の差別がある取引条件については、ここでは詮索されてない。アカデミックな研究としては、隘路に入ることを避けて妥当と思われる。多少なりとも差別を含めた実態を明らかにしたのは、出版労連取次ユニオン編『現場からみた これが取次だ』㊟(増訂版、2013年)である。

非常に重要なデータと思うのは「諸外国の価格拘束の現状」の表、International Publishers Association(国際出版者協会)の“Global Fixed Book Price Report”(世界のブック価格拘束レポート)、2014年の13か国の一覧である。価格拘束の期間、その間の許容割引規定、電子書籍への適用or不適用が記されている。以下、主な国について紹介する。

  • ドイツ:発行から18か月、公共機関・学校に10%まで、電子書籍にも適用
  • フランス:発行から2年間、一般に5% 図書館に10%、電子書籍にも適用
  • イタリア:発行から20か月、ブックフェアで20%、電子書籍に不適用
  • 韓国:発行から18か月、19%、電子書籍にも適用 

13か国のすべてが価格拘束は一定の期間限定で、最大が2年間である。うち8か国が電子書籍にも適用されている。

再販制の日本では、少なくない国が日本と同じ制度をもっていると認識されているように思う。しかし、すべてが時限再販で、「永久再販」は日本のみであることは、あまり知られてないのではなかろうか。そして、価格拘束の期間も、公共機関中心に一定の値引きが認められていおり、柔軟で総合的な保護政策になっていることを知る必要があろう。

(しんむら やすし、出版労連京都地協)

㊟『現場からみた これが取次だ~出版流通と労働条件の改善をめざして』
副題に「現場から見た」「改善をめざして」とあるように、出版労働者が2011年に著した取次の実態を明らかにした冊子です。
<2013年増補版(頒価200円、発行・出版労連)>