東京オリ・パラでの海外メディアの行動制限と比例原則①

東京オリンピック・パラリンピック(以下、「東京オリ・パラ」と記す)の大会組織委員会が、海外から取材に訪れるメディアに対し、GPSなどを使って厳格な行動管理を行うという趣旨の発表を行った。これは「言論・表現の自由」を制限する重大な問題である。そのことを、国連の自由権規約との関連で考えてみたい。

自由権規約第12条「移動の自由」を見てみよう。

  1. 合法的にいずれかの国の領域内にいるすべての者は、当該領域内において、移動の自由及び居住の自由についての権利を有する。
  2. すべての者は、いずれの国(自国を含む。)からも自由に離れることができる。
  3. 1及び2の権利は、いかなる制限も受けない。ただし、その制限が、法律で定められ、国の安全、公の秩序、公衆の健康若しくは道徳又は他の者の権利及び自由を保護するために必要であり、かつ、この規約において認められる他の権利と両立するものである場合は、この限りでない。
  4. 何人も、自国に戻る権利を恣意的に奪われない。

(*外務省HPの「外交政策」より)

これに対して、「条約機関の一般的意見」は、その「27」の14項で次のように述べている。

第12条3項は、制限が許容される目的達成に資するというだけでは不十分であり、それらの目的達成にとって必要なものでなければならないことを明記している。制限措置は比例原則に適合するものでなければならない。すなわち、制限は目的達成のために適切なものでなければならず、目的を達成する手段のうち最も非侵害的な手段でなければならず、更に達成される利益と比例するものでなければならない。

(*日弁連HPの「自由権規約 条約機関の一般的意見」より)

と、「比例原則」に言及しながら、その制限が「最も非侵害的な手段でなければならない」と述べている。この「比例原則」については、「一般的意見34」で第19条の「意見及び表現の自由」について述べる中でも、「一般的意見27」との関連で触れられている。

かつて「特定秘密保護法」が問題になった時に、「ツワネ原則」が取り上げられた。「ツワネ原則」では、「原則43と46」で情報の公開と秘密保持との間の「比例原則」を、「原則47と48」でジャーナリストをはじめ政府に関係のない一般の人々が「情報にアクセスすることの自由」を述べている。このことをベースに考えてみたい。(次回に続く)