書籍は長く売るものだから(出版研究室から[43])

4月1日より、一般消費者向け小売店店頭で、総額表示による販売義務化が開始される。期限が迫るなか書店では、店頭設置期間がおおよそ定まっている定期刊行物は税込価格が表示されているが、ほぼすべての書籍は未だ税別表記となっている。

3月25日時点で、筆者が都内の新刊書店数か所で調査をしたところ、ある店では新刊平台にある書籍3040点ほどある書籍のうち、総額表示は2点だけだった。税別表記の新刊書籍の奥付をみると、数日前の発行日となっているものもあった。しかし、なかには数年前の既刊本を今年1月に重版したものが、総額表示になっていたものもあり、各社の対応はまちまちなのがうかがえる。

そもそも、総額表示は、「消費者が支払金額の誤認を防ぐ」が目的だ。しかし、書籍の総額表示はかえって消費者の誤認を与えると、私は考える。

現状、税率の変更がないなかでは、総額表示もしくは本体価格の表示が混在していても、大きな問題はおこらないと思う。しかし、トラブルとなってくるのは将来、税率が変化した場合だ。

税込価格が表示されている書籍の価格表示が新税率に改定されず、客が支払う段になって表示と異なる金額を請求される事例が、多発するのではなかろうか。価格表示の責任は小売店にあるが、取次会社と書店は再販価格維持の契約を結んでいるため、書店が書籍の価格表記に手を加えることは、原則できない。

新刊書は回転が速いが、それでも数年にわたって店頭に置かれる書籍は多数。書籍は消費財ではあるが、その性質上安定した価格で、長期にわたって購入できることこそ、消費者の利益になる。

実務面でも、見計らいの送品や、長く書店に置かれている書籍は、版元自身が自社書籍の所在が把握できないということもある。

本末転倒の恐れがあるこの制度を、行政側は今一度、より良い運用になるよう検討してほしい。

(出版研究室・佐倉エリカ/『出版労連』2021411585号より)