授業での公衆送信と補償金の話(出版研究室から[47])

2021年4月から授業目的公衆送信保証金制度がスタートしました。ものすごーく簡単にいうと、授業で著作物をネットワーク上で配布等する際、この制度を利用して補償金を払えば個別申請なしで原則OKになった、ということ(詳しい制度主旨、内容、手続き等については公式サイトをご覧ください)。著作権者から見ると、事前申請なしでOKなので、使用料が支払われて初めて使用されたことがわかるしくみ。

そこで、ものすごーく気になるのは、いったいどれくらいの著作権者がこの制度を知っているの? ということ。

授業でいろいろな著作物がとりあげられ、児童生徒の好奇心や知識が広がっていくことはいいことだと思う。でも著作権者はこの制度のもう一方の中心人物でもあるのだから、著作権者たちに(制度への賛否は別にして)「ああ、あの制度ね」と言われるくらい周知されている必要があるとも思う。

この制度を管理する一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会(舌噛みそうな名称だなあ…)や、この協会の社員とされている協会、団体はもちろん周知徹底していることでしょう!(じゃないとマズイでしょう!)

でも、そんな協会、団体に所属していない著作権者もたくさんいます。むしろ、世にあるさまざまな著作物を考えると、そういう著作者たちのほうが多いはず…。

教育現場の利便性を否定はしないけど、制度を作るなら関係者への最大限の配慮をしてほしいなあ、と思うのは間違っているでしょうかね…。

(出版研究室・當田マスミ/『出版労連』2021年8月1日‐1589号より)

Society for the Administration of Remuneration for Public Transmission for School Lessons:SARTRAS(サートラス)