出版流通の現状と非正規労働者[2](出版研究室から[10])

取次の非正規労働者の18春闘が終結した。前号で紹介したSLAとコバヤシユニオンズ(KU)の結果は、ともに厳しい内容であった。

SLAは時給500円の賃上げと一時金を要求した。結果はゼロ回答で終結した。KUは、有給休暇取得手続きの周知や特別休暇、休日出勤手当の割増し、通勤手当を要求した。

会社は「全従業員対象に有給休暇の日数を明示する」と回答。あわせて、現行の1、2ヵ月の2通りの契約期間を6ヵ月に揃えて延長することを確認した。

2社との団体交渉で明らかになったことは取次大手2社の「合理化」の実態である。

下請け企業に対する契約単価の切り下げ、倉庫の作業環境整備や設備の老朽化対策などが遅れていることなども共通している。

SLAやKUは請け負う業務量の減少が直で営業収入の減となる。

扱い量の減少は深刻で両社ともに扱い量は対前年同月比で20%近く減っているという。残業で処理していたが、現在は月火に集中する作業を後半に分散して仕事を作る場合もある、との説明もあった。

この取次と下請けの構造と非正規労働者を抱え提供して利益を得る構造で、会社は「賃金は上がるもの、上げるものではない。地場の相場が上がり、今の時給で採用できない時には上げる。いまはまだだ」と公言した。

雇用者責任は最賃で果たしているとの姿勢に対して、最賃引上げの大きな運動が必要だ。

いま、出版関連産業の流通基盤が崩れつつある。業界全体の対策が求められているが、取次関連で働く非正規労働者の問題を抜きに解決はできない。

(出版研究室長・橘田源二)〔『出版労連』1552号/201871日より〕