オリンピックとメディア  ~世論と報道の実態は何を意味するのか<Part2>(5月9日付「しんぶん赤旗」、5月5日付「ワシントンポスト」コラムから)

日本のメディアは、今からでもオリンピック開催の是非を含めて正面から取り上げて報じる役割を負っているといえる。が、メディアはこの議論を避けている。

非常事態宣言の延長が話題になっていた5月9日付「しんぶん赤旗」の「テレビ時評」欄に田島泰彦さん(早稲田大学非常勤講師・元上智大学教授/メディア論)が「五輪 市民のための報道を」と題した文章を寄せている。これまでにも東京オリンピック・パラリンピック開催に疑問や反対の声が出ていたにも関わらず、「日本の主要メディアは~開催、推進の『応援団』の役割を果たしてきた」と指摘している。その理由として「すべての全国紙と北海道新聞は『オフィシャルパートナー』などとして~スポンサーに加わっており」として財政的な支援をする当事者になっていること、IOCとの契約で「NHKや民放は~開催を前提にオリンピックを盛り上げる放送が使命とならざるを得ない」と書いている。「NHKが~長野市の聖火リレー中継を行っているの際~『オリンピックに反対』~の抗議の~音声が消された」ことは、都合の悪い真実を隠して報道するという深刻な実態をさらしたものと厳しい批判をしている。

田島さんの指摘はオリンピック開催にひた走る国や東京都に何も言えない関係になっているメディア側の内実を明らかにしたものである。加えて、オリンピック組織委員会が企画していた開会式のハラスメント的な企画案を掲載した『週刊文春』と「文春オンライン~に対して~著作権の侵害などを理由に~発売中止や回収~を要請し」た経過を批判的に報じたメディアが限られていたことも、言論、表現活動へ抑圧として危惧している。

オリンピックが本来の姿から商業的な要素が強まってきたと言われて久しい。世界のメディアが、コロナ過でのオリンピック開催に懐疑的になっている。ワシントンポスト紙は、コロナで参加を見合わせる国が出ていても、利益最優先でオリンピックの開催に固執するバッハ会長を「ぼったくり男爵」(5月5日付「ワシントンポスト」の「Baron Von Ripper-off」をこう訳したのは、共同通信外信部だそうだ/うまい!)と書いている。

地球温暖化で異常気象が予想され、さらにコロナ感染を収束させる対策もないままに東京オリンピック・パラリンピックを開催するのか。人間の力で競う平和の祭典が人類の危機を拡大させるイベントになる可能性がある。日本のメディアが、国民の声に耳を貸さず、むしろ負の要素を隠してオリンピック推進の報道を続けていることについて、田島さんは「市民に敵対し、ジャーナリズムや報道機関の本務に背くかつての大本営発表の再現そのものであ」ると、メディアを総動員体制になぞらえている。そして、最後に五輪開催国の日本の「メディアも開催中止の論陣を毅然と提示する責任がある」と結んでいる。